ウツシアイ

それから、約一週間が経った十月の上旬。
ここ数日、僕は自分の体にある小さな違和感を覚えていた。
夜はきちんと寝ているはずなのに、朝起きると、どうしてもしつこい疲労が身体の奥に残っている。まるで、自分が眠っている間に何キロも全力疾走したあとのような、芯に響く重さだ。
風邪でも引いてしまったのだろうか。そんな風に思っていたある日の放課後、駿が珍しく神妙な顔をして僕の席へと歩み寄ってきた。
「なぁ、サク。ちょっといいか。演技の話じゃなくて、アキのことなんだけどさ」
いつも気怠げな駿のトーンが、妙に低い。僕は背筋の伸びるのを感じた。
「アキがどうかしたの?」
「……最近のアキ、ちょっと頑張りすぎって言うか、ぶっちゃけ見てて壊れそうなんだよ。めいちゃんとの練習もさ、完璧にやろうとしすぎて完全に余裕がない。この前なんて、台詞を言いながら一瞬、目眩起こしたみたいにふらついてた」
駿の言葉に、心臓が冷たく跳ねた。
そう言うことだったのか…。
朝起きるたびに感じていた、あの鉛のような重い身体の正体を、僕は一瞬で理解した。
僕が眠りについた後、表に出たアキがそれこそ命を削るような熱量で一人、この体を動かして練習し続けていたのだ。僕が自分の練習以上に感じていたあの疲れは、全部、アキの限界の悲鳴だった。同じ体を共有しているからこそ、彼女が背負った過酷な疲労が、そのまま僕の身体に牙を剥いていたんだ。
夜、日記を開くたびに文字が小さくなっていたこと、部屋のゴミ箱に見慣れない栄養ドリンクの空き瓶が転がっていたこと。駿の言葉によって点と線がつながり、激しい焦燥感が胸を突き刺した。