ウツシアイ

サクは台本を読んではいるけど、私がここで掴んだ飛行士の気持ちや、めいさんと作った空気感まで共有していない。サクに恥をかかせるわけにはいかない。二人の飛行士を、完璧に繋がないといけない。
家に帰り、夕飯とお風呂を済ませて自室に戻った私は、机に向かってペンを走らせた。
いつもの連絡事項とかではなく、私が今日、図書室でめいさんと一緒に見つけた『飛行士の心』の全てを日記に書き殴るように残していく。

『九月二十三日
めいさんと図書室で劇の練習をした。
セリフのニュアンスとか、練習してて感じたとを書いていくね。(サクも感じているかもだけど)
飛行士はね、ただ砂漠に不時着して困っているだけじゃないの。王子さまと出会って、目に見えない大切なものに気づいていくの。
私が掴んだセリフの強さとかタイミング、ここに全部書いておくから、お願いだからよく読んで。もし本番の日、私じゃなくてサクが舞台に立つことになっても、私の代わりに完璧に演じてほしいな。私たちの飛行士をみんなに見せてあげて。
追記。
めいさんがね、『いちばんたいせつなことは、目に見えない』って言ってたんだ。
私たちの姿は姿はお互いに見えてないけど、だからこそ、ノートに残るサクの文字とかを読むたびにサクが私のこと大切に思ってくれていることがなんとなく伝わってくるよ。
だから、私もサクのために最高の舞台にしたいって思う。それじゃあ、また明日。ノートの中でね。おやすみなさい。』
インクが乾くのを待たずにノートを閉じ、いつものようにスマホを金庫にしまう。
ベッドに入り、ゆっくりと目を閉じる。
次に目を覚ますのが、私なのか、彼なのかわからない。だけど、私の祈りのようなこの文字が、どうか彼の心に届きますようにと願いながら、深い意識の底に沈んでいった。

『九月二十四日』
アラームの音で体を起こし、まだ少し重い頭を振りながら、サクの週間の通りに机の上のノートを開く。そこには昨日アキが真剣に、そして、必死に書き残したことが、彼女の丁寧な文字でびっしりと並んでいた。
アキがめいさんと見つけたという、『飛行士』の心の動き。
どのタイミングで声を張り、どのセリフで視線を落とすべきか。舞台に立つかもしれない僕が困らないようにと、細かなアドバイスがノートの余白を埋めつくように書かれていた。