ウツシアイ

「アキ先輩の飛行士。すごくいい感じです。声のトーンもちゃんと朔夜先輩って感じがしますよ」
「本当?よかった…。めいさんが相手役やってくれるから、すごい感情が入りやすいよ」
私がホット胸を撫で下ろすと、めいさんは台本をパタンと閉じて、どこかいたずらっぽく目を細めた。
「『星の王子さま』ってすごく素敵な話ですよね。王子さまは最後に自分の星に帰っちゃうから切ないお話に見えるけど、本当はそうじゃないんです。目に見えなくても、飛行士の心の中にはずっと王子さまが生き続ける。『いちばんたいせつなことは、目に見えない』ってそういう意味なんですよ」
「目に見えない、大切なこと…」
めいさんの言葉が、私の胸の奥の、一番柔らかい場所にスッと染み込んでいく。
姿は見えないけれど、日記の文字を通して、誰よりも強くつながり合っているサクと私。私たちは同じ体にいて、決して同時に存在することはできないけど、めいさんの言う通り、お互いの心の中にちゃんと生きているのかもしれない。
「私、アキ先輩と友達になれて本当に良かったです。たとえ周りの人には朔夜先輩に見えても、私だけは、ここにいるのがアキ先輩だってちゃんとわかってますから」
めいさんはまっすぐに私を見て、そう言ってくれた。
サクの秘密を知っても変わらずにいてくれた、最初の、そして最高の友達である駿。彼がいてくれたから、私は今まで孤独にならずに済んだ。そして、今、サクがめいさんに真実を話してくれたおかげで、私は駿の次となる新しい友達ができたんだ。
私の正体が気持ち悪がらず、一人の人間として心を通わせてくれる人が、私の世界にまた一人増えた。大好きな彼への愛おしさと、私を見つけてくれた友達への感謝で、胸がいっぱいになった。
予鈴のチャイムが遠くで鳴り響き、私たちの特別なリハーサルは終わりを告げた。
「アキ先輩、本番、絶対に見に行きますから!応援してます!」
めいさんは元気な笑顔で大きく手を振ると、図書室を小走りで出て行った。
一人取り残された私は、サクの体で、さくの胸に手を当てた。トク、トク、と刻まれる鼓動が、今愛おしくて、そして猛烈に不安だった。
文化祭の本番は二日間。
もし、本番の日に表に出るのが私じゃなくて、サクだったら?