ウツシアイ

まずは、自分のクラスの準備へと向かった。祝日の特別登校日だというのに、教室にはジャージや私服を着たクラスメイトが集まって、背景の大きな絵を描いていたり、衣装のサイズ合わせをしたりしていたりと、演劇ならではの活気と熱気に包まれていた。
「あ、飛行士パイセン!おはようございます!」
私…サクに飛行士を演じて欲しいと他のできたあの演劇部の女の子が声をかけてきた。私は少し低いトーンで「おはよう」と返事をした。
午前中、私は昨日との誤差をあまり感じさせないようにと、いつものように駿に頼りっぱなしになりながらも自然い振る舞った。
そして、お昼過ぎ。作業がひと段落ついて、一時間の休憩が言い渡された。
私は自分の鞄から『星の王子さま』の台本を取り出し、駿に一言声をかけ、クラスの喧騒から少し離れ、一人で静かにセリフを読める場所である、後者の端っこにある図書室へと向かった。
重い扉をそっと開けると、冷房のきいた空間に微かな古い紙の匂いが満ちていた。
誰もいない静寂の中で台本を開こうと、窓際の席へと歩き出した時。
「……あ」
本棚の隙間から、一人の女の子がひょっこりと顔を出した。
歳が一個下の指定鞄を机に置き、同じようにクラスの出し物の準備らしきカラーテープを腕に巻いためいさんだった。彼女のクラスも何か出し物をやるだろう。きっと私と同じように休憩時間に、ここに涼みにきたみたいだ。
彼女は私を見るなり、じっとその瞳を覗き込んできた。そして、ここにいるのがサクではなく私であることを見抜いた瞬間に、その顔が一気にパッと明るくなった。
「おはようございます。じゃなくてこんにちはですね。アキ先輩」
「ふふ、こんにちは。めいさんもクラスの準備できてたんだね」
「そうなんですよ。お化け屋敷のもう午前中ずっと段ボール切らされてて手が痛くて…って、そんなことより奇遇ですね」
めいさんは嬉しそうに足元を跳ねさせると、私が小脇に抱えている劇の台本に目を留めた。
「あ、それ。クラスの劇の台本ですよね?アキ先輩なんの役やるんですか?」
「うん、実はね。飛行士の役なの」
「めちゃくちゃメインじゃないですか」