『九月二十二日』
『九月二十一日
飛行士のセリフ、すごくかっこいいね。先週サクが持ってきた台本やっと全部目が通った。もし、私がやるってなっても私がやりたいって言ったんだし、責任もってやらせていただきます。もし、二日間ともサクになったらごめん(笑)』
昨日の夜、最新のページにそう書かれていた。
日毎にランダムで人格が交代するという僕たちの日常。昨日は丸一日、彼女がこの体の主導権を握っていた。彼女は僕が残しておいた劇の台本をやっとの思いで読み込んだらしい。ここ数週間は僕が主導権を握る日が少し前より多かった。そのせいで読み込むのが遅くなったようだ。
人前に立つなんて僕の性分じゃない。今だから言うが、最初は断る予定だった。でも、彼女がここまで何かをやりたいとねだるなんて初めてだった。外見だけは僕だけど、中身は女の子の彼女。もし本番で彼女の日になるのが、理想だ。それでも、男の役を演じるのは人一倍大変なはず、それでも彼女は僕のフリをして演じ切ると言っていた。二人で一つの役を作る。それは、僕たちにしかできない、最高に贅沢な共同作業な気がした。
「……汚さないように、か」
九月の三連休、その中日にあたる祝日の朝。
僕は劇の大道具作りと練習のために、休日返上で学校に向かっていた。
いつもなら閉まっているはずの正門をくぐると、校舎から賑やかなジャズBGMや機材を削る音が聞こえてくる。祝日という開放感のせいか、ジャージや私服で集まったクラスメイトは、いつもの平日よりもどこかウキだった熱気に包まれていた。
「おい、手が止まってるぞ、飛行士殿。自分の飛行機が墜落するぞー」
放課後のように西陽が差し込む教室で、僕がダンボール製の飛行機に黄色いペンキを塗っていると、隣でダンボールを押さえてくれていた駿が、ニヤリと笑った。
『九月二十一日
飛行士のセリフ、すごくかっこいいね。先週サクが持ってきた台本やっと全部目が通った。もし、私がやるってなっても私がやりたいって言ったんだし、責任もってやらせていただきます。もし、二日間ともサクになったらごめん(笑)』
昨日の夜、最新のページにそう書かれていた。
日毎にランダムで人格が交代するという僕たちの日常。昨日は丸一日、彼女がこの体の主導権を握っていた。彼女は僕が残しておいた劇の台本をやっとの思いで読み込んだらしい。ここ数週間は僕が主導権を握る日が少し前より多かった。そのせいで読み込むのが遅くなったようだ。
人前に立つなんて僕の性分じゃない。今だから言うが、最初は断る予定だった。でも、彼女がここまで何かをやりたいとねだるなんて初めてだった。外見だけは僕だけど、中身は女の子の彼女。もし本番で彼女の日になるのが、理想だ。それでも、男の役を演じるのは人一倍大変なはず、それでも彼女は僕のフリをして演じ切ると言っていた。二人で一つの役を作る。それは、僕たちにしかできない、最高に贅沢な共同作業な気がした。
「……汚さないように、か」
九月の三連休、その中日にあたる祝日の朝。
僕は劇の大道具作りと練習のために、休日返上で学校に向かっていた。
いつもなら閉まっているはずの正門をくぐると、校舎から賑やかなジャズBGMや機材を削る音が聞こえてくる。祝日という開放感のせいか、ジャージや私服で集まったクラスメイトは、いつもの平日よりもどこかウキだった熱気に包まれていた。
「おい、手が止まってるぞ、飛行士殿。自分の飛行機が墜落するぞー」
放課後のように西陽が差し込む教室で、僕がダンボール製の飛行機に黄色いペンキを塗っていると、隣でダンボールを押さえてくれていた駿が、ニヤリと笑った。

