「そんな映画みたいなこと考えたことなかったです。でも…そっか。だからなのか。移動教室とかで先輩を見かけても視界に入ってないみたいな冷たいのに、図書室の先輩だけは、まるで別の女の子と話しているみたいに優しかったから。私は…先輩が、私にだけ特別な素顔を見せてくれるんだって勝手に自惚れてました」
「自惚れなんかじゃないよ。彼女はきっと君にだけにしか見せない顔を見せてた。僕らは交換日記をしてるんだけど、そこに君の名前とか、図書室のことすら書いてなかったんだ。それって僕に君のことを知られたくなかったんじゃないかなって僕は思う。ここには普段、僕は来ないから。今回のことは本当にたまたまだったんだよ。本当は話す気なんてなかったし、話したくなかったから君を拒絶しようとした。本当にごめん。だけど、君さえ良ければ、これからもあいつと仲良くしてあげてくれないか。あいつの『唯一の友達』のままであげてほしいんだ。それは僕にはできないから」
「わかりました。こちらこそ、なんか無理に話させたみたいでごめんなさい。正直、私、先輩のこと男して好きでした。中身が女の子だとしても、私がここでドキドキしてた気持ちは嘘じゃないです。学校の廊下で先輩を見かけるたびに胸が苦しかったのは本当なんです。だから、私の最初で最後の初恋は、今日、ここで終わりにします」
言葉を失った。まだ二回しか会ってない自分に、これほど真っ直ぐな気持ちをぶつけてくれた彼女の健気さに、喉の奥がカッと熱くなった。
「そっか…。気付けなくて、ごめん」
僕は家に帰り、あの後輩から託された言葉と今日あったことを、淡々とノートに書いていた。僕自身の醜い独占欲を殺して、誤魔化すためだった。
心の中で黒いモヤのような感情が渦巻いていた。
僕はアキのことを誰よりも知っていて、本当の名前を呼べる数少ない人間だったのに、あいつに『実態がない』という冷酷な現実を誰よりも絶望しているのに。なのに、あの後輩の女の子は、その絶望すらも、とうに受け入れる覚悟だった。僕には、そんな風にあいつを愛する資格すらないと思い知らされたみたいで、惨めで、悔しかった。
書き終えた文字を眺めながら、僕は小さく自嘲気味に笑った。
「自惚れなんかじゃないよ。彼女はきっと君にだけにしか見せない顔を見せてた。僕らは交換日記をしてるんだけど、そこに君の名前とか、図書室のことすら書いてなかったんだ。それって僕に君のことを知られたくなかったんじゃないかなって僕は思う。ここには普段、僕は来ないから。今回のことは本当にたまたまだったんだよ。本当は話す気なんてなかったし、話したくなかったから君を拒絶しようとした。本当にごめん。だけど、君さえ良ければ、これからもあいつと仲良くしてあげてくれないか。あいつの『唯一の友達』のままであげてほしいんだ。それは僕にはできないから」
「わかりました。こちらこそ、なんか無理に話させたみたいでごめんなさい。正直、私、先輩のこと男して好きでした。中身が女の子だとしても、私がここでドキドキしてた気持ちは嘘じゃないです。学校の廊下で先輩を見かけるたびに胸が苦しかったのは本当なんです。だから、私の最初で最後の初恋は、今日、ここで終わりにします」
言葉を失った。まだ二回しか会ってない自分に、これほど真っ直ぐな気持ちをぶつけてくれた彼女の健気さに、喉の奥がカッと熱くなった。
「そっか…。気付けなくて、ごめん」
僕は家に帰り、あの後輩から託された言葉と今日あったことを、淡々とノートに書いていた。僕自身の醜い独占欲を殺して、誤魔化すためだった。
心の中で黒いモヤのような感情が渦巻いていた。
僕はアキのことを誰よりも知っていて、本当の名前を呼べる数少ない人間だったのに、あいつに『実態がない』という冷酷な現実を誰よりも絶望しているのに。なのに、あの後輩の女の子は、その絶望すらも、とうに受け入れる覚悟だった。僕には、そんな風にあいつを愛する資格すらないと思い知らされたみたいで、惨めで、悔しかった。
書き終えた文字を眺めながら、僕は小さく自嘲気味に笑った。

