ウツシアイ

体育館についてすぐに目に入ったのはまだ、練習開始時間でもないのにガッツリ練習している先輩。橘ひかり先輩。駿が恋をした先輩だ。いや、諦めたらしいから恋をしていた。が正しいか。
他の先輩や同級生なんかはスマホをいじったり、シャトルで遊んでいるけど、橘先輩だけが練習をしていた。
あの熱血な感じが僕は苦手なのだと思う。性格からして全く合う気がしない。
「お疲れ様です、先輩」
そんなことお構いなしに真っ先に駿は橘先輩のところに行き、挨拶をしていた。僕はそんな様子を傍観していた。
「お疲れ、星野。今日も元気がいいな」
「よければ練習付き合いますよ」
「お、お願いできるか」
そう言って二人で練習開始まで十分あるのに試合みたいに全力で練習をしていた。僕はそれを端っこで体育座りをしながら見ていた。橘さんはこの間の大会で県大会に出ていた。それに引けを取らない駿もすごいと思う。
「よし練習始めるぞー」
顧問の山口先生が来た。僕らの一学年上の三年のどこかのクラスの担任をやっているらしい。
練習を開始させてから一時間が経過した。すでに体力はそこを尽きていた。それでも必死に食らいついた。自分でもなんでこんなに頑張ってるのかわからないけど。
さらに一時間が経過して団体練習が終わった。ここからは残りたいものだけが残る。ようは個人練習の時間だ。
「サク、今日は残る?」
「あー、今日は予定があるから帰るけど、駿は残んの?」
聞かなくても答えはわかっているが、会話の流れからして聞くのが妥当だろう。
「いや、今日は帰るよ」
てっきりいつも通り残るのかと思っていたので少しだけ驚いた。
個人練習には大体部員の半分くらいの人が残る。ちなみに部員は五十名ほどだ。正確に数えてないけどそれくらいいる。
「じゃあ、帰るか」
「そーだな」
荷物をまとめて、先輩たちに挨拶をして体育館を出た。
そのまま駅まで歩いて行き、電車に揺られ、バスに揺られ、地元の駅に着いた。
駿とは家が近い、だからって毎朝一緒に登校したりはしない。理由は彼が部活の朝練に参加しているからだ。僕は諸事情により参加していない。まぁ朝から疲れることをしたくないっていう事情だ。
駿とは小学校からの幼馴染。小学三年生の時に僕がこっちに引っ越してきてからできた最初で最後の友達が駿だ。