ウツシアイ

というわけで僕らは二人で先輩のところに行き、「三年間、お疲れ様でした」とだけ伝え、一人の時間にさせてあげることにした。すると先輩は笑顔で「ありがとう」と言ってくれた。
「あれで良かったのかな」
「僕がああいう状況だったら一人にしてくれる方がありがたいって思うかな。他の人はどうかわからないけどね」
「俺も…そうかも」
駿なら励ましてもらった方が元気になると思って、『他の人はどうかわかんない。』と言ったのに、僕の言っていることに同意されてしまった。
「ならいいんじゃないかな」
僕はそう返事をするしかなかった。

『八月十一日』
今日は山の日。というわけで箱根に来ている。というわけで、というか、たまたま今日部活がなくて、体の主導権が僕だっただけだ。
「空気が美味しいなぁ!」
僕は今も田舎の方に住んでいるからか、あまり変化がわからなかった。
「いつもと変わらなくね?」
「確かにいつもと似てるかもしれないけど微かに違うんだよ」
「なんだそれ。ほら、行くぞ」
僕はふっと笑ってから日記を開き、アキがこの日記に書いた言った場所を一つ一つ巡っていくことになっている。駿はこの僕の気持ちの悪い行動に『楽しそうじゃん』と言ってくれた。
「とりあえずまずは、あのアイス食べたい」
日記には『駅前にあるアイスがめちゃくちゃ美味かった。サクにも食べてほしいなぁ』
と書かれていたので早速食べてみることにする。
アキの言う通り、めちゃくちゃ美味かった。
それから僕らは日記に書かれていることを順番に行った。
まずは箱根登山電車で山登り。初めてこんな感じの電車に乗ったが、スイッチバックの度に驚く駿が面白かった。僕も彼女と同様に写真に収めた。
彫刻の森美術館では自分とそっくりな『嘆きの天使』と呼ばれる物を見た。いろんな写真が僕の机の上に置いてあった。でも、この写真だけというわけじゃないにしても、この写真は置いてなかった。見たけど何も感じなかったから写真を撮らなかったのか、それとも、意図的なのか。僕にはわからないし、聞く勇気もない。
僕はその作品に触れることなく、次のスポットへ向かった。
その前にお腹が空いたので、これも日記に書かれていた店で昼食を済ませることにした。
「僕は…豆腐かつ煮で」
「じゃあ俺もそれにしようかな」