ウツシアイ

次の場所に向かう前にお腹が減ったので何か食べようと思い、強羅駅周辺で豆腐かつ煮なんかを堪能した。無事お腹がいっぱいになったところで次の目的地に向かった。
標高が上がるにつれて涼しくなる風を感じながらロープウェイへと向かった。大涌谷のダイナミックな火山煙に圧倒されながらも、ここの名物である黒たまごを堪能した。四個入りしか買えなかったので、これもお土産として、残りの三つを持ち帰ることにした。終わりの時間に近づいたので最後に箱根に行くと決めた時にこれだけは絶対にしようと思った、温泉に浸かりに行くことにした。
箱根湯本駅まで直行バスで戻り、そこから出ている無料の送迎バスに乗り、温泉の入れる場所まで来た。
緑のトンネルを抜けると、そこは時間が緩やかに溶け出す異郷だった。
バスに乗りながらそんな感想が出ていた。木々に埋もれるように佇む古民家風の建物が、私を現世の喧騒から切り離してくれた。昭和の湯治場を思わせる木造の風情に、ここまでの旅で凝り固まった力がふっと抜けた気がした。
大浴場の暖簾をくぐり、まずは内湯で体を温めた。それから窓の向こうに広がる箱根の山肌を眺めながら、湯の温もりに身を委ねた。しかし、この場所の真髄は一歩外へ踏み出した先にあった。
山の傾斜をそのまま活かした石段の露天風呂。見上げれば、青々とした木々が天井の代わりに空を覆っている。大きな壺湯に体を沈め、溢れ出た湯が贅沢な音を立てて溢れていった。深く息を吸い込む。私たちが住んでいる場所の空気とどこか似ているようで似ていない。そんな香りが鼻を抜けていく。
十分味わったところで、目の前にサウナがあった。私はサウナに入ったことがない。だからせっかくだから経験していくことにした。ちょうどロウリュと呼ばれるものが始まる時間らしい。熱せられたサウナストーンにアロマ水が注がれると、爆発的な熱風が全身を包み込んだ。肌を突き刺すような熱気が、体内の老廃物を全て搾り出していく。
限界まで耐え、一歩一歩踏みしめるようにして向かったのは、地下から汲み上げられた沢水の水風呂。
つま先を浸した瞬間、文字通り息が止まった。一瞬で体が凍りつくような、すごい冷たさ。しかし思い切って肩まで浸かると、今度はじわじわと体、皮膚の表面が熱を帯びてくるような感覚があった。
水から上がり、木々の梢がそよぐベンチに腰をかけた。