ウツシアイ

行き当たりばったりとはいえ、おばあちゃん、おじいちゃんを心配させたくないから当日に決めるといった感じだ。どこに行こうか考えても思いつかないので朝ごはんを食べながらおばあちゃんに聞いてみることにした。
「おばあちゃん。今日、日帰りでどこか行こうと思うんだけど、何かいい場所あったりする?」
美味しそうに焼けたパンにバター、いちごジャムを塗りながらそう聞いた。
「どういうところに行きたいかによるなぁ」
「うーん…日帰りで行けるちょっと遠いところ?とか?」
自分が行きたい場所の話なのに疑問系になってしまった。
「あーそれなら箱根とかいいんじゃないかしら。私たちも昔行ったことあるのよ。もうずいぶん昔になるわね。ねぇあなた」
そう言うのでおじいちゃんの方に目をやると静かに頷いてくれた。
「箱根か…行ったことないからそこにする!」
パンを食べ終え、支度をして、おじいちゃんが駅まで車で送ってくれたのでお礼と、お土産を買ってくることを伝え、改札を抜け、電車に乗った。
電車でここから二時間くらいかかるらしい。揺られながら外の景色を眺める。すぐに彼にも見せたいと思ってしまい、携帯を取り出し、写真を何枚か撮った。
目的地の箱根湯本駅に到着した。現在時刻は十時。楽しい一人旅の始まりだ。
早速、駅前に売っていた珈琲牛乳ソフトを買い食いした。この暑い日差しの下で食べるアイスは格別に美味かった。
そして、そのまま箱根登山電車で山登りをした。スイッチバックの度に「おぉー」となって、車窓に広がる夏の濃い緑に癒された気がした。もちろんこれも写真に収めた。
そして次に、『彫刻の森美術館に足を運んだ。そこにあう『嘆きの天使』という作品を見て、今の自分と重なった気がした。同じ体を共有しているのに、決して同時に表に現れることができない自分たちにどこか似ている。
この天使は水の中かたずっと空を見上げている。外の世界に出たいのだろうか。それとも…誰かのことを思ってないているのだろうか。やっぱり私と彼みたいだ。私が起きている時は、あなたは私の中の深い水底で眠っている。私が眠ると、彼が水面に顔をだす。なんとなくそれも写真に収めた。
その他の作品も見て回ったけど、さっきの『嘆きの天使』という作品が頭から離れずにいた。