ウツシアイ

『六月十一日』
鬱陶しい携帯のアラームを止めて、重たい体を起こし、眠たい目を擦り、ベッドから降りる。
勉強机に一旦座り、机の上に置いてある交換ノートを開く。

『六月十日
昨日出された宿題やってなかったでしょ。
朝、駿に言われて確認したら案の定やってなくて慌ててやったんだからね?きちんとやらないと成績に響くから!
それと、前にも書いたけど、お金使いすぎ!もっと計画的に使ってくれないと本当に使いたいときに使えないんだけど。あと、明日の五限の国語に漢字テストあるみたいだから朝勉強しておくように!

「はぁ…」
読み終えた瞬間からため息が出てしまった。
朝から憂鬱だ。こういうことがあるから早起きしなくてはいけない。現在時刻は朝の五時。この交換ノートに特に予定が書かれていなかったらこのまま二度寝するはずだったのに…。流石にこれで変な点を取ったら怒られるから少しだけ漢字の勉強をする。
鞄から教科書を取り出し、目の前にある日めくりカレンダーをめくり、その裏を使って漢字をひたすら書いた。
三十分ほど経過してそろそろ支度をして学校に行かないといけない時間になったので自室を出て
「おはよう、おばあちゃん」
「おはよう、サク。朝ごはんできとるよ」
おばあちゃんは僕のことをサクと呼ぶ。本名は朔夜。おばあちゃんはすごい。見分けることができていることがとにかくすごい。おじいちゃんは新聞を読みながらご飯を食べていた。
「おはよう、サク」
おじいちゃんは気難しい人だ。優しいしとは思うし、一緒に暮らしていて特に何も不満はないのだが、笑っている顔を見たことがない。テレビでお笑い番組を見ていても無表情だし、新聞を読んでいる今でも顔色ひとつ変わらない。そんな人。
僕は洗面所に行き、顔を田舎特有の冷たい水で眠気を飛ばす。
そのまま居間に向かい、食卓に着き、おばあちゃんの作ってくれたご飯と味噌汁と焼き鮭を食べる。朝はご飯派とパン派どちらかと聞かれたら僕はご飯派だ。彼女はパン派らしいけど。
「ご馳走様でした」
米粒ひとつ残すことなく平らげ、食器を流しに置いて、着替えるために自室にもう一度向かう。
パジャマから制服に着替え、今日の学校で使う教科書やノートを鞄に詰め込んで、玄関に行く。
「じゃあ、行ってきます」
「行ってらっしゃい」