「帰らなくていいのかよ、バイトだろ」
「大丈夫」
真の机の前に椅子を持ってきて、頬杖をつきながら日誌に目線を向ける。
一日交代で書くと決めたのに、南はこうやって真が書き終わるまで見守っている。見守っていると言っても、書いている内容には口を出さない。
「終わった」
「よし、帰ろー」
教卓の上に日誌を置き、リュックを背負って下駄箱に向かった。
しゃがんで運動靴を取ると、一呼吸置いて、ぐっと肩を持ち上げる。
「いやー、いつも重そうだね、そのリュック」
「逆にそっちは軽そうだけどな」
南はローファーのつま先をトントンとし、手でかかとを入れ、バッグをひょいと肩にかけた。
「何が入ってるの?」
「こっちが聞きたい」
「教科書なんて置き勉すればいいのに」
「見たい時にないと、ストレスになる」
肩紐の位置を少しずらし、負担を分散しながら歩く。僕のはねー、とバッグの中身を教えてくれた。
「散歩に行く時の中身だろ、それ」
「それ以外必要ないし」
こういうところは、合わないらしい。
南と一緒に帰るようになってから、違う道を通るようになった。
今までは大きな通りを歩いていたが、同じ目的地のはずなのに、同じ生徒が少ないのは感じていた。細い道に入って、公園を突っ切る道を教えてもらい、そこを歩いてみると、生徒が沢山いた。
実際の距離がどれくらい変わるかは、分からないが、いまさら近道を知ることができた。
踏切が見えてきた。ここを渡ると、賑わいが増す。
「じゃ、またね」
「また明日」
真は塾に行き、南はバイトに行く。だいぶ、この流れに慣れてきた。
帰り道では、色々なことを話す。その日の学校の話、好きなもの、特にアイドルライフの話。オタクは、こういうところで距離を近づけるのが得意らしい。近づけるというより、壁をなくすというか、この人は仲間だ、という感覚になる。陰と陽の属性も、気にしている間に南が来てくれるので、もうどうでもよくなった。
南と毎日話していても、話題が尽きない。というよりは、その場で思いついたことを口にしても、話が広がる。
そして何より、沈黙の時間が気まずくない。ほかの人であったら、その瞬間は、何かしないと、と頭の中で持っている話の話題を高速で探す。しかし、南と話していて、静かになると、ソファに座って一息をしているような安心感がある。これが、真にとって、何よりも楽だった。
「大丈夫」
真の机の前に椅子を持ってきて、頬杖をつきながら日誌に目線を向ける。
一日交代で書くと決めたのに、南はこうやって真が書き終わるまで見守っている。見守っていると言っても、書いている内容には口を出さない。
「終わった」
「よし、帰ろー」
教卓の上に日誌を置き、リュックを背負って下駄箱に向かった。
しゃがんで運動靴を取ると、一呼吸置いて、ぐっと肩を持ち上げる。
「いやー、いつも重そうだね、そのリュック」
「逆にそっちは軽そうだけどな」
南はローファーのつま先をトントンとし、手でかかとを入れ、バッグをひょいと肩にかけた。
「何が入ってるの?」
「こっちが聞きたい」
「教科書なんて置き勉すればいいのに」
「見たい時にないと、ストレスになる」
肩紐の位置を少しずらし、負担を分散しながら歩く。僕のはねー、とバッグの中身を教えてくれた。
「散歩に行く時の中身だろ、それ」
「それ以外必要ないし」
こういうところは、合わないらしい。
南と一緒に帰るようになってから、違う道を通るようになった。
今までは大きな通りを歩いていたが、同じ目的地のはずなのに、同じ生徒が少ないのは感じていた。細い道に入って、公園を突っ切る道を教えてもらい、そこを歩いてみると、生徒が沢山いた。
実際の距離がどれくらい変わるかは、分からないが、いまさら近道を知ることができた。
踏切が見えてきた。ここを渡ると、賑わいが増す。
「じゃ、またね」
「また明日」
真は塾に行き、南はバイトに行く。だいぶ、この流れに慣れてきた。
帰り道では、色々なことを話す。その日の学校の話、好きなもの、特にアイドルライフの話。オタクは、こういうところで距離を近づけるのが得意らしい。近づけるというより、壁をなくすというか、この人は仲間だ、という感覚になる。陰と陽の属性も、気にしている間に南が来てくれるので、もうどうでもよくなった。
南と毎日話していても、話題が尽きない。というよりは、その場で思いついたことを口にしても、話が広がる。
そして何より、沈黙の時間が気まずくない。ほかの人であったら、その瞬間は、何かしないと、と頭の中で持っている話の話題を高速で探す。しかし、南と話していて、静かになると、ソファに座って一息をしているような安心感がある。これが、真にとって、何よりも楽だった。
