色々なことが起きて、消化しきれていないが、なぜだかスッキリした。南と二回も抱き合ったんだ。ハグはストレスを半分軽減すると聞いたことがあるが、その効果を感じた。
「ただいま」
「おかえり、ごはんできてるよ」
洗面台で手を洗い、自分の顔を見る。少し目が腫れているが、気づかれないだろうか。
リビングに行くと、好物の春雨サラダが銀のボールに溢れるほど、のせてあった。
気分が上がっていると、二人が椅子に座る。
「テスト終わりの、ご褒美」
お酒を自分の席に置いた。
「ありがとう」
箸をもち、早速春雨サラダを自分のお皿に取った。いつもより、取りやすい。
「春雨の太さ、変えた?」
「真が、細いほうが好きっていうから、変えてみた」
文句を言ったわけではなかったが、覚えていてくれたのか。
きゅうりと、ハムが良いアクセントになって、いつも通り、美味しい。細い春雨は、太いものよりも味が染みるため、好みだ。
「テストは、どうだったの?」
今日成績出たんでしょ、と母は酒を一口。
「クラス一位だったよ」
おお、と目を丸くする。
「すごーい!!」
妹も、春雨サラダを口いっぱいに、ほほ張りながら目を合わせた。
「頑張ったね」
胸がじわっと温かくなった。なんだか、いつもと違って、二人は真を見る。気になって母の方を向いた。
「最近、思い詰めているようだから、心配だったの。塾もいつもより行っているみたいだし」
ちゃんと、見ていてくれていたのか。
心の中の重りが、一つ減った。
石橋に、足を乗せる。
やってみないと、分からない。
真は息を吐く。
今だ。
「…俺の話、聞いてくれる?」
母は、当たり前でしょ、と笑う。
もうちょっと進む。
「仲がいい、友達ができた」
へぇ、と興味深そうに聞いてくれる。
どんな人?と妹は問う。
走る。
「明るくて、優しい人。いつも、助けてくれる」
言っていて、少し恥ずかしくなってしまった。
今度うちに呼んだら?と母は、新しいお酒を作りに台所に行く。
「名前、何て言うの?」
「苗字が一緒なんだ。二ノ瀬、南」
「まじ!すご!!」
妹に、イケメン?と問われたので、うんと頷いた。
母が、ステンレスグラスを持って、戻ってきた。ふぅ、とゆっくり座る。
「言われたの。私ばかりで、全然お兄ちゃんのことを言わないじゃんって」
少し、しんみりした空気になる。
「三人になってすぐ、真はすごく頼りになった。昔は友達とゲームばっかりしてたのに、沢山勉強するようになった。それで、正直安心しちゃったの。でも、それは、真に負担になってるんじゃないかって」
真は、ゆっくり、頷いた。
やっぱりね、と母は申し訳なさそうに言う。
「ごめんね、真」
隣の椅子から立ち上がり、抱いてきた。どうしていいか分からないし、少し照れくさい。
「これからは、真の話、沢山聞かせて」
よし、食べようかと、食事を再開した。
石橋を、渡りきった。
橋の先に、二人がいる。
南を思い出す。南のおかげで、心の重りが、無くなった。
俺は、南の役に、立てるかな。
「あのさ、お母さん」
「なに?」
「気になることがあるんだけど」
うん?、と箸を置き、真の方を向いた。
「小学六年生の時、階段から落ちた時の話、聞かせて」
母は、瞬きをする。口を開きっぱなしにし、怪訝そうに言った。
「何の話…?」
「え、ほら、階段から落ちたって、前に教えてくれただろ」
首を傾げながら、あのこと?と、口を開いた。
「四歳の時の話?」
心臓が、飛び跳ねた。
「…四歳?」
数時間前のことが思い浮かんだ。
それが、同じように、再現されていく。
「ほら、お父さんが、真を抱っこしてたのに、落としちゃって」
覚えてないの?と不思議そうに見る。
「そんなことあったっけ?」
妹が、ご飯を食べながら聞く。
「ほら、あなたが勝手に階段登っちゃって、落ちたから、お父さんがびっくりして、真を投げちゃったのよ」
そんなことある!?と妹が目を見開く。
でしょー、と母はありえない、という声を出す。
「…なんで、お父さん、いないんだっけ」
二人は、目を見開いて、真を見る。
「…なんでって、病気で亡くなったでしょ?」
何の、と聞く前に、妹が答えた。
「脳の病気」
息をするのを、忘れていた。
スマートフォンから、南の声が聞こえる。
『…そんなこと、よくある話、じゃない、よね』
南が、驚きを隠せていないことが声でわかる。
「そもそも、そんなに記憶ってなくなるものなのか?」
『…確かに、言われてみれば』
二人の間で、何も起きない時間が続く。
「…明日、話そう」
『…そうだね』
真は、スマートフォンを閉じた。
何がが、おかしい。
自分は、階段に落ちて記憶をなくしてたと勘違いしていた。父が、借金を残して亡くなったことは想像できたが、病気で亡くなったことは知らなかった。南と同じ時期に、同じような階段の落ち方をしている。
スマートフォンを再び開き、調べようと思ったが、こんな偶然が、インターネットで解決できると思えず、やめた。
普段であれば、不安で動けなくなるかも知れない。怖いはずなのに、胸が高まっている。
南が、病気ではないかも知れない。
それさえ証明できれば、また南も、心の底から笑えるだろうか。
「ただいま」
「おかえり、ごはんできてるよ」
洗面台で手を洗い、自分の顔を見る。少し目が腫れているが、気づかれないだろうか。
リビングに行くと、好物の春雨サラダが銀のボールに溢れるほど、のせてあった。
気分が上がっていると、二人が椅子に座る。
「テスト終わりの、ご褒美」
お酒を自分の席に置いた。
「ありがとう」
箸をもち、早速春雨サラダを自分のお皿に取った。いつもより、取りやすい。
「春雨の太さ、変えた?」
「真が、細いほうが好きっていうから、変えてみた」
文句を言ったわけではなかったが、覚えていてくれたのか。
きゅうりと、ハムが良いアクセントになって、いつも通り、美味しい。細い春雨は、太いものよりも味が染みるため、好みだ。
「テストは、どうだったの?」
今日成績出たんでしょ、と母は酒を一口。
「クラス一位だったよ」
おお、と目を丸くする。
「すごーい!!」
妹も、春雨サラダを口いっぱいに、ほほ張りながら目を合わせた。
「頑張ったね」
胸がじわっと温かくなった。なんだか、いつもと違って、二人は真を見る。気になって母の方を向いた。
「最近、思い詰めているようだから、心配だったの。塾もいつもより行っているみたいだし」
ちゃんと、見ていてくれていたのか。
心の中の重りが、一つ減った。
石橋に、足を乗せる。
やってみないと、分からない。
真は息を吐く。
今だ。
「…俺の話、聞いてくれる?」
母は、当たり前でしょ、と笑う。
もうちょっと進む。
「仲がいい、友達ができた」
へぇ、と興味深そうに聞いてくれる。
どんな人?と妹は問う。
走る。
「明るくて、優しい人。いつも、助けてくれる」
言っていて、少し恥ずかしくなってしまった。
今度うちに呼んだら?と母は、新しいお酒を作りに台所に行く。
「名前、何て言うの?」
「苗字が一緒なんだ。二ノ瀬、南」
「まじ!すご!!」
妹に、イケメン?と問われたので、うんと頷いた。
母が、ステンレスグラスを持って、戻ってきた。ふぅ、とゆっくり座る。
「言われたの。私ばかりで、全然お兄ちゃんのことを言わないじゃんって」
少し、しんみりした空気になる。
「三人になってすぐ、真はすごく頼りになった。昔は友達とゲームばっかりしてたのに、沢山勉強するようになった。それで、正直安心しちゃったの。でも、それは、真に負担になってるんじゃないかって」
真は、ゆっくり、頷いた。
やっぱりね、と母は申し訳なさそうに言う。
「ごめんね、真」
隣の椅子から立ち上がり、抱いてきた。どうしていいか分からないし、少し照れくさい。
「これからは、真の話、沢山聞かせて」
よし、食べようかと、食事を再開した。
石橋を、渡りきった。
橋の先に、二人がいる。
南を思い出す。南のおかげで、心の重りが、無くなった。
俺は、南の役に、立てるかな。
「あのさ、お母さん」
「なに?」
「気になることがあるんだけど」
うん?、と箸を置き、真の方を向いた。
「小学六年生の時、階段から落ちた時の話、聞かせて」
母は、瞬きをする。口を開きっぱなしにし、怪訝そうに言った。
「何の話…?」
「え、ほら、階段から落ちたって、前に教えてくれただろ」
首を傾げながら、あのこと?と、口を開いた。
「四歳の時の話?」
心臓が、飛び跳ねた。
「…四歳?」
数時間前のことが思い浮かんだ。
それが、同じように、再現されていく。
「ほら、お父さんが、真を抱っこしてたのに、落としちゃって」
覚えてないの?と不思議そうに見る。
「そんなことあったっけ?」
妹が、ご飯を食べながら聞く。
「ほら、あなたが勝手に階段登っちゃって、落ちたから、お父さんがびっくりして、真を投げちゃったのよ」
そんなことある!?と妹が目を見開く。
でしょー、と母はありえない、という声を出す。
「…なんで、お父さん、いないんだっけ」
二人は、目を見開いて、真を見る。
「…なんでって、病気で亡くなったでしょ?」
何の、と聞く前に、妹が答えた。
「脳の病気」
息をするのを、忘れていた。
スマートフォンから、南の声が聞こえる。
『…そんなこと、よくある話、じゃない、よね』
南が、驚きを隠せていないことが声でわかる。
「そもそも、そんなに記憶ってなくなるものなのか?」
『…確かに、言われてみれば』
二人の間で、何も起きない時間が続く。
「…明日、話そう」
『…そうだね』
真は、スマートフォンを閉じた。
何がが、おかしい。
自分は、階段に落ちて記憶をなくしてたと勘違いしていた。父が、借金を残して亡くなったことは想像できたが、病気で亡くなったことは知らなかった。南と同じ時期に、同じような階段の落ち方をしている。
スマートフォンを再び開き、調べようと思ったが、こんな偶然が、インターネットで解決できると思えず、やめた。
普段であれば、不安で動けなくなるかも知れない。怖いはずなのに、胸が高まっている。
南が、病気ではないかも知れない。
それさえ証明できれば、また南も、心の底から笑えるだろうか。
