「…家族には言えないことって、これのことだったんだな」
「うん」
南は、足元を見る。
「…病院には、行かない?」
「行かない。もし、病気だったら、家族に伝えるしかなくなる」
固く、決めているようだ。
「でも、違う可能性もあるかも、しれないだろ」
「それは、わからない」
真は一生懸命、頭の回転を早くする。何か、方法はないのか。
南が、意外なことを口にする。
「僕もね、四歳くらいの時、階段から落ちたことある」
「そうなのか?」
南は、ククッと思い出し笑いをした。
「ひどいんだよ、お父さんが僕を抱えて階段登ってたら、妹が階段に登り始めちゃって、それで案の定、妹が落ちて、お父さんびっくりしちゃって、俺を手から離しちゃったんだ」
真も、少し笑う。
「俺は小6の時、階段から落ちた。落ちた記憶もないけど。やっぱり脳ってケガするとヤバいよな」
真は、切なそうに笑う。無理に笑っているのが分かり、南の顔はそれと逆の口になる。
「···本当に記憶がないの?」
「ん。頑張って思い出そうとしても思い出せない、むしろ、最初から存在しなかったんじゃないかと疑うくらい、何もない」
真は、足元を見つめる。
空間の外で、掛け声がする。
カラスの声も響き始めた。辺りは、おれんじになりかけている。
「南」
「ん?」
「俺、南のこと、全然知らなかった」
そろそろと顔を上げた。
「だから南のことをもっと知りたい」
南は胸が熱くなる。その熱は、すぐに目元に集まる。
「さっきの南を見て、俺、何も知らなかったって、こんなに苦しんでたんだって、いつも明るくて、余裕な顔してたけど、本当は無理に笑ってた…?」
真も同じだった。口を歪ませながら、眉を八の字にしている。
太陽が二人と平行になり、急に眩しくなって目をつぶった。すぐそこの水槽の苔の匂いが鼻にツンと来て、南の頬には一本の水がつたる。
「俺がいる、大丈夫」
真は、真っ直ぐな瞳で、見上げる。
南はたまらなくなり、真を大きく包んだ。爽やかな柑橘の香り。ゆっくりと南の背中にも腕で包まれていくのを感じた。
「うん」
南は、足元を見る。
「…病院には、行かない?」
「行かない。もし、病気だったら、家族に伝えるしかなくなる」
固く、決めているようだ。
「でも、違う可能性もあるかも、しれないだろ」
「それは、わからない」
真は一生懸命、頭の回転を早くする。何か、方法はないのか。
南が、意外なことを口にする。
「僕もね、四歳くらいの時、階段から落ちたことある」
「そうなのか?」
南は、ククッと思い出し笑いをした。
「ひどいんだよ、お父さんが僕を抱えて階段登ってたら、妹が階段に登り始めちゃって、それで案の定、妹が落ちて、お父さんびっくりしちゃって、俺を手から離しちゃったんだ」
真も、少し笑う。
「俺は小6の時、階段から落ちた。落ちた記憶もないけど。やっぱり脳ってケガするとヤバいよな」
真は、切なそうに笑う。無理に笑っているのが分かり、南の顔はそれと逆の口になる。
「···本当に記憶がないの?」
「ん。頑張って思い出そうとしても思い出せない、むしろ、最初から存在しなかったんじゃないかと疑うくらい、何もない」
真は、足元を見つめる。
空間の外で、掛け声がする。
カラスの声も響き始めた。辺りは、おれんじになりかけている。
「南」
「ん?」
「俺、南のこと、全然知らなかった」
そろそろと顔を上げた。
「だから南のことをもっと知りたい」
南は胸が熱くなる。その熱は、すぐに目元に集まる。
「さっきの南を見て、俺、何も知らなかったって、こんなに苦しんでたんだって、いつも明るくて、余裕な顔してたけど、本当は無理に笑ってた…?」
真も同じだった。口を歪ませながら、眉を八の字にしている。
太陽が二人と平行になり、急に眩しくなって目をつぶった。すぐそこの水槽の苔の匂いが鼻にツンと来て、南の頬には一本の水がつたる。
「俺がいる、大丈夫」
真は、真っ直ぐな瞳で、見上げる。
南はたまらなくなり、真を大きく包んだ。爽やかな柑橘の香り。ゆっくりと南の背中にも腕で包まれていくのを感じた。
