石橋は二人で渡れば怖くない

南は、両手で顔を覆いながら、はーっと息を吐く。

「…聞いてくれて、ありがとう」
「…うん」

背もたれに寄りかかって、両手を外し、空を見上げた。真も、真似をしてみた。
おれんじ色の空で、雲がゆっくりと動く。心地よい風が頬に触れる。もう、ちょうどいい気温になっていた。

「長男って、大変だよね」
ただ、分かった気で慰める声ではなかった。
共感をもとめる声色だった。
「南も、兄弟いるの?」
顔を左に向けた。南は空を、見上げている。
「…真と同じくらいの妹がいる。しかも、そっくり」
「そっくり?」
「勉強できないところとか、ゲームばっかりしてるところとか」
困っちゃうよねー、と目を閉じながら笑った。
南は背もたれから背中を離し、真の方に体を向けた。同じように、南に向き合った。
「ごめん、さっきと違うこと言うね」
「…うん」
「大切な人が関わると、踏み出せないよね」
南の瞳には、うっすら涙が浮かぶ。
胸がぶわっと熱くなる。
言いたいことを言えない、嫌いな自分を、丸ごと包みこんでくれる、優しい声だった。

「さっき、偉そうに言っちゃったけど、僕もそうだ」
「南も?」
「うん」
意外な姿だった。言いたいことを、ハッキリ言えることが南の尊敬できるところであるのに。
「僕も、家族には、言えない」
事情は違うけど、と付け加え、目線を下げた。
その声が、めずらしく弱気で、その痛さが伝わる。

痛いのに、なぜか、嬉しい。

「同じだね」
南は目を細めて、笑顔を作った。
ゴールドのピアスが、夕日に反射して眩しい。



真は、ぎゅっとシャツを掴んだ。
心はここにあるんだって、わかってしまった。



















ベットに仰向けになり、目をつむる。
肩の荷が、ほとんどなくなって、体が軽い。
事情は違うけど、と溢した南を思い出す。



その事情は、南の、セクシュアリティのこと…?