生徒会室は本日も「甘やかし」につき使用中

(嘘、だろ……)

 高校2年、秋。
 俺は今、漫画でしか見たことのないような絶望を味わっていた。

「おめでとう!」
「やっぱり亜蘭(あらん)だよな!」
「すげえじゃん、会長!」

 周囲から次々と飛んでくる祝福の声。
 そのどれもが、今の俺には悪魔の声にしか聞こえない。

 目の前に掲示された選挙結果。
 俺の名前の横には、当選を示す真っ赤な花が惜しげもなく咲いている。

「おめでとう、生徒会長!!」

(めでたくない!!!!)

 そもそもの始まりは、ただの数合わせだった。
 俺が知らないところで勝手に推薦され、気づいたときには立候補者に名前を連ねられていた。

 立候補した覚えなんて勿論ない。
 それなのに蓋を開けてみれば、まさかの圧倒的大差。

 俺は見事、生徒会長に当選してしまっていた。

(なんでだよ……!!)

 熱狂する人だかりの中心で、俺だけが絶望に打ちひしがれている。

 …いや、正確には俺以外にも1人だけ、この状況を心の底から喜んでいない人間がいる。

「あーあ。やったなぁ、会長さん」

 聞き慣れた声に振り向く。そこにいたのは、俺の恋人だった。そして俺と同じくいつの間にか勝手に推薦されて、半ば強制的に出馬させられた被害者でもある。
 そんなこいつの目には、俺の絶望を面白がるような愉悦とどうしようもないものを見るような憐れみが入り混じっていた。

「……」
「そんな怒んなって。ほら、俺も同じやからさ」

 そう言って、そいつは親指で背後を指し示す。
 俺の名前のすぐ隣。そこに、そいつの名前も掲示されていた。そして副会長当選を告げる真っ赤な花が、これでもかと誇らしげに咲いている。

「…………」
「な?」
「な?じゃねえよ!!!!」

 俺たちはどうやら、2人そろって逃げ場を失ったらしい。