ついにやってきた瀬古の誕生日。今日の俺のミッションは3つ。1、瀬古にプレゼントを渡す。2、ロミジュリカップルが一緒にいるところを瀬古に見せない。3、生駒先輩を呼び出し、瀬古と高柳先輩の2人時間を作ること。
朝、校門を抜けた俺は頭をフル回転させる。
同じクラスだからプレゼントを渡すタイミングはあるとして…問題は生駒先輩だ。連絡先も知らないし、教室に行くのも変に目立つし…どうやって呼び出そう。
「妹尾君、おはよう」
声がして振り返ると生駒先輩がいた。
「あ、おはようございます」
いつも登校時間に会わないはずの生駒先輩に会うなんて、これは神様からのエールでは!?
「あの、生駒先輩…」
「なぁに?」
「お願いがあるんですけど…」
「…?」
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移動教室が無かったおかげで、午前中に瀬古がロミジュリカップルを目にすることは回避できた。ちなみにプレゼントは、部活で使えそうなタオルを朝一番に渡し済み。
昼休みの教室で、本日の主役と書かれた襷を掛けた瀬古は、クラスメイト達からお弁当のおかずやお菓子を貰っている。
「瀬古ー、おめー」
「おぉ、さんきゅー」
「今日はキイたんと誕生日デート?」
クラスメイトからの唐突な質問に瀬古はさらっと答える。
「あたりめーじゃん。お前ら、邪魔すんなよ?」
「へいへい」
「つーことで、今日デートしない?」
瀬古は隣に座る俺の手を握って問いかける。
「いや、今誘うんかい!」
周りからの鋭いツッコミに瀬古は楽しそうに笑う。
今日のミッションに瀬古とデートすることはなかったけど、誘われた時のためにちゃっかり予定を空けていた俺。
「キイたん、断ってもいいんだぞ?誕生日だからって調子乗らせないでいいから」
「乗ってねぇよ。…ほんとはキイの誕生日にデートしたかったけど俺部活だし、今日がいいと思ったんだけど…どう?」
「…うん、今日大丈夫だよ。むしろ、誕生日なのに誘ってくれてありがとう」
「何言ってんだよー。誕生日だからキイがいいんだって」
そう言って、笑顔の瀬古は俺を膝の上に乗せた。目の前でいつも以上にイチャつかれて、クラスメイト達は半分呆れている。
そこに飲み物を買いに行っていたはーぎーと貝原が戻ってきた。
「お、どしたどした!?」
「せせカップルが公開イチャコラしてんだよ」
「しゃーねぇよ。今日は誕生日だから許してやってくれ」
「ま、公開イチャイチャは日常茶飯だけどね」
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「キイ、帰ろうぜ」
放課後、部活が休みの瀬古は約束通り俺を誘った。
「あ、ごめん。ちょっとだけ用があって、20分ぐらい図書室で待ってもらってもいいかな?」
「え、あーうん、了解。用終わったら連絡して」
「うん」
瀬古を図書室に誘導した俺は、急ぎ足で屋上へ向かった。
屋上のドアを開けると、生駒先輩が空を眺めていた。
「お待たせしてすみません」
「ううん、大丈夫だよ。お疲れ様」
俺が生駒先輩を呼び出した口実は、姫ポジの相談。まだ姫ポジでいたいけど、来年には後輩も入ってくるし、自分の立ち位置を安定させる為にはどうしたらいいか悩んでいる、という無理のある設定にも関わらず生駒先輩は快く引き受けてくれた。
少しの時間で大丈夫だから、一緒に帰る高柳先輩には図書室で待ってもらっておいてくださいとお願いした。
きっと今頃、瀬古と高柳先輩は図書館内で偶然会っているだろう。
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約20分後、相談に乗ってくれた生駒先輩は校門へ向かい、俺は図書室へ向かった。
めちゃくちゃ親身に話聞いてくれたなぁ…。本当に良い人で、普通に憧れちゃうんだけど。
「瀬古、お待たせ」
図書室で待っていた瀬古の表情が幸せそうで、ミッションクリアしたはずなのに心が一瞬ズキっとなってしまった。
「お疲れ。…さっきまで高柳先輩いてさ」
「え、そうなの?誕生日に会えて良かったね!」
「おん。誕生日知ってくれてたみたいで、鞄に付けてた目印チャームくれた」
「わぁ、それは嬉しいね!…せっかくだし、誘えばよかったのに」
「高柳先輩を?」
「うん。俺よりも高柳先輩と遊んだ方が最高の誕生日になったと思うよ?」
「うーん、生駒先輩待ってるって言ってたしなぁ。…ま、会えただけで十分!それに俺はこれからキイとデートだしな」
「…。」
自分が優先されたなんて勘違いはしない。優しい瀬古が、高柳先輩の生駒先輩への気持ちを優先しただけの話。
とはいえ、ミッションはクリアしたわけだし、自分へのご褒美としてデート楽しんでいいよね!?
◇
放課後一緒にショッピングモールへ行って、その後ちょっとお洒落なカフェで夜ご飯とケーキを食べた幸せな瀬古との誕生日デートから2日後。
登校し、教室に入った途端はーぎーから頭に何かを乗せられた。
「…!?」
「キイ、こっち…」
瀬古にエスコートされ前を見ると、教卓の上にお菓子タワーがあり、黒板にはチョークで誕生日メッセージやイラストが描かれていた。
「わぁ…!」
「せーのっ…」
「「キイちゃん、お誕生日おめでとうー!!」」
クラッカーとともにクラスメイト達からお祝いの言葉を伝えられ、まさかのサプライズに驚きと嬉しさが込み上げてくる。
「えー!みんな、ありがとうー!!どうしよう、嬉しすぎて泣きそう」
「あはは、サプライズ大成功だなっ!」
「ちなみにこの黒板アートは、藤が描きました」
珍しくドヤ顔でピースする藤くんにお礼を伝えた後、黒板の前で撮影タイムが始まった。
俺の頭にはティアラが乗っているようで、単体ショットを撮る際、みんなは「キイ姫可愛いよー」「姫、こっち向いてー」とノリノリで盛り上がっている。
そして、いつもの4人で撮った後はクラスメイト達に囲まれての撮影。
こんなに愛されてるなんて、本当に幸せ者だなぁ。
ふと廊下を見ると、スマホを持った他のクラスの人たちが「俺らとも撮ってよ」と中へ入ってきた。
色んな人と写真を撮っていたら、あっという間に予鈴が鳴った。その時「俺も一緒に撮ってもらっていいかな?」と声がして、その人物に全員驚いてしまう。
「え、生駒先輩…どうして!?」
「妹尾君、お誕生日おめでとう」
「あ、ありがとうございます」
「天馬君、お願いしていい?」
生駒先輩は自分のスマホを瀬古に手渡した。
「んじゃ、撮りまーす。はい、チーズ…」
生駒先輩と手でハートを作る女の子みたいなポーズをして写真を撮った。
「ごめんね、突然」
ドアまで生駒先輩を見送ったら、周りの生徒達は一定の距離を置いてコソコソ見ている。
「いえ、わざわざありがとうございました」
「あ、さっきの写真送りたいから、連絡先教えてもらっていいかな?」
「はい、もちろんです」
「ありがとう」
思わぬ形で生駒先輩の連絡先をゲットできてしまった。
✳︎
昼休み、ティアラと先日瀬古が使用した“本日の主役”襷を身に付けている俺。
「希一くーん、誕生日おめでとー!」
「キイくん、写真撮ろうよ」
2年の先輩達がお菓子やちょっとしたプレゼントを持って、会いにやって来てくれた。
廊下で撮影タイムをしていると、ドア付近から見守る瀬古達は何やら話をしている。
「さすがキイちゃん、2年にもファンいっぱいだな!」
「2年生は、妹尾派と生駒先輩派に分かれるからね。ま、さすがの瀬古も先輩には大人しくするから、先輩も妹尾には絡みやすいんじゃない?」
「…。」
「あっ」
「キイくん、なんか良い匂いすんね」
そう言った先輩は俺を後ろからハグした。
「わぁっ」
「あはっ、かわい」
「お前、希一君お持ち帰りすんなよー?」
「ハグもフィットするし、やば、ハマりそう」
次の瞬間、ハグをする先輩の片腕を瀬古が俺から離した。
「…そろそろ離れてもらっていいですか?」
「…。」
「えー、今日ぐらいせせカップルは無しでいいじゃん。本当の彼氏じゃないんだし、誕生日を祝う気持ちは周りと一緒じゃね?」
そうだよ。俺と瀬古は本当のカップルじゃない。
「一緒じゃないっすよ。俺とキイの仲は、他の人とおんなじじゃないです。だからこの学校で一番キイを祝う気持ちがでけぇのは俺です、絶対に」
瀬古…。
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放課後、瀬古は部活に行く前に靴箱まで俺を見送ってくれていた。
「部活休めなくてごめんな」
「全然気にしてないよ」
「ありがと。そういや今日、ツーショット撮れて…」
「あ」
靴箱前に生駒先輩が立っていた。
「2人ともお疲れ様」
「お疲れ様です」
「妹尾君、良かったら一緒に寄り道しない?」
「えっ、あ、でも…」
「あ、高やんは今日用事があるから一緒に帰らないんだよ」
「そうなんですね」
「用事ある?」
「いえ、特に」
「じゃあ、決まりね!天馬君、妹尾君お借りするね」
優しく微笑んだ生駒先輩は、さらっと腕を組んできた。
「…あ、はい」
あれれ…もしかして、俺の事好きにさせよう作戦上手くいってたりする!?



