俺には夢がある。ミュージシャンになることだ。
その夢を人前で語るには、最近、少しばかり気おくれを感じるようになってきた。今年でちょうど二十歳になる。十代の頃と違って、夢ばかり語っていられないことは、自分が一番理解していた。
高校を卒業後、音楽関係の短大に通いながら、レコード会社のミュージシャン養成所に籍を置いた。ロックを気取ってみたりバラードを歌ってみたり、手を替え品を替え自分の才能をアピールしてきたが、ちっとも芽が出ない。
歌うことは、昔から大好きだった。俺が歌うと秀はとても喜んで、大げさなくらいに褒めてくれたものだ。
椎木秀一郎。
今でもよく覚えている名前だ。俺がミュージシャンを目指すようになったきっかけの人物である。
小学四年生のとき転校してきた秀は、カナダからの帰国子女だった。五年生のとき同じクラスになり、出席番号が近かったことがきっかけでよくツルむようになった。
成績優秀だった文化系の秀と、運動と元気だけが取り柄だった体育会系の俺。性格は対照的だったけれど、大の仲良しだった。
自分の身の丈ほどもあるギターを抱えて俺が歌うと、秀は目を閉じて聞き入り、静かに身体を揺らしてリズムをとった。
今思えば、子どものお遊戯みたいな、へたくそな歌だっただろう。それでも俺が歌うと、秀は喜んで拍手をしてくれた。それが最高に嬉しかった。
「君には、才能がある」
子どもらしからぬ口調で、秀はそう言った。目つきは真剣そのものだ。色素の薄い彼の瞳はガラス細工みたいで、うっとりするほど綺麗だった。八分の一だけ彼に混ざっている、カナダの血がそうさせているのかもしれない。
「君は歌手になるべきだ」
秀はふだん寡黙な少年だったけれど、口数が少ない分、彼の発する言葉にはいつも重みがあった。お世辞のような嘘臭さがない、彼の真っ直ぐな話し方が好きだった。
俺は強く頷き、親指を立てた。
「プロになったらさ、秀に一番に聞かせるよ」
「本当か?」
念を押す彼に、約束するよ、と笑いかけた。
「だからさ、感想きかせてくれよな」
わかった、と秀も満面の笑みを作った。
「約束だ」
その夢を人前で語るには、最近、少しばかり気おくれを感じるようになってきた。今年でちょうど二十歳になる。十代の頃と違って、夢ばかり語っていられないことは、自分が一番理解していた。
高校を卒業後、音楽関係の短大に通いながら、レコード会社のミュージシャン養成所に籍を置いた。ロックを気取ってみたりバラードを歌ってみたり、手を替え品を替え自分の才能をアピールしてきたが、ちっとも芽が出ない。
歌うことは、昔から大好きだった。俺が歌うと秀はとても喜んで、大げさなくらいに褒めてくれたものだ。
椎木秀一郎。
今でもよく覚えている名前だ。俺がミュージシャンを目指すようになったきっかけの人物である。
小学四年生のとき転校してきた秀は、カナダからの帰国子女だった。五年生のとき同じクラスになり、出席番号が近かったことがきっかけでよくツルむようになった。
成績優秀だった文化系の秀と、運動と元気だけが取り柄だった体育会系の俺。性格は対照的だったけれど、大の仲良しだった。
自分の身の丈ほどもあるギターを抱えて俺が歌うと、秀は目を閉じて聞き入り、静かに身体を揺らしてリズムをとった。
今思えば、子どものお遊戯みたいな、へたくそな歌だっただろう。それでも俺が歌うと、秀は喜んで拍手をしてくれた。それが最高に嬉しかった。
「君には、才能がある」
子どもらしからぬ口調で、秀はそう言った。目つきは真剣そのものだ。色素の薄い彼の瞳はガラス細工みたいで、うっとりするほど綺麗だった。八分の一だけ彼に混ざっている、カナダの血がそうさせているのかもしれない。
「君は歌手になるべきだ」
秀はふだん寡黙な少年だったけれど、口数が少ない分、彼の発する言葉にはいつも重みがあった。お世辞のような嘘臭さがない、彼の真っ直ぐな話し方が好きだった。
俺は強く頷き、親指を立てた。
「プロになったらさ、秀に一番に聞かせるよ」
「本当か?」
念を押す彼に、約束するよ、と笑いかけた。
「だからさ、感想きかせてくれよな」
わかった、と秀も満面の笑みを作った。
「約束だ」

