まっつんの背中が大きく見えた。
同級生のそれとは違う、おとなの男のひとなんだな、と当たり前のことを思った。
『お前ひとりだけが主役ってわけでもない』
『お前と母さんががんばった特別な日』
『誕生日をくれてありがとう』
まっつんの低くて優しい声が何度も頭の中でリピートされる。
誕生日の主役はわたしだけじゃない。
ママだって、出産おめでとうって、祝福される立場だ。
少なくともわたしは、まっつんの意見に同意できる。
言わなきゃ。謝らなきゃ。伝えなきゃ、感謝。
「まっつんさよーなら!またあした!」
職員室へ入っていくまっつんに大きく手を振って、走った。
気持ちも走ってうっかりニックネームで呼んでしまった。
なにげ初めて口ずさんだその響きに少しときめいたわたしがいたのは、きっと気のせい。
あ、いけない。そういえば友だち、待たせているんだった。
「ごめんみんな!今日行けなくなっちゃった!」
「えっ、大丈夫?なんかあった!?」
「うん、ちょっと急用できちゃって急いで帰らなきゃいけなくて!ほんっとごめんね!」
「いやいやあたしたちはいいけど、主役はヨリちゃんだから!とーぜんヨリちゃん優先だよ!」
「うー、ありがとう!ほんと良い友だち持った!今日すごく幸せな誕生日だった!」
「きゃははっ、重いって~!ほら急いでるんでしょ?早く行きなよ」
トントン、と優しく背中を押してくれるみんな。
ごめん、ありがとう。
手を振って駆け足で靴箱へ向かい、そのまま勢いよく外へ駆け出した。

