誕生日


「誕生日って自分が主役だと思いがちだけど、自分の誕生日があるっていうのは、母さんが命がけでがんばったおかげでもあるんだよ」

「たしかに……」

「そんな偉大なる母を大嫌いだなんて嘘でも言うな」


はい、と小さく返事する。
さっきの失言を猛省した。


「でも先生、約束を守らない大人ってどうなんですか」

「ハハッ、そうきたか」

「大人になっても親になっても完璧な人間はいないんだなって、ドジでおっちょこちょいなママを見てるといつも思っちゃいます」

「篠原は真面目でしっかり者だもんなー」

「今日は寝坊しちゃいましたけど」


ハハッと鼻から息を吹くまっつん。
わたしも苦笑いで肩をすくめる。


「……産んでもらったから感謝しなさいって、わたしは腑に落ちたけどそうじゃない人もいるかもしれませんよ」

「おー……想像以上に鋭いんだな、篠原って」


眉を上げて感心したようにうなずくまっつん。

ふと、まっつんの授業で印象的だったとあるテーマを思い出す。


「少子化問題の授業で先生言ってたじゃないですか」

「うん?」

「子どもを産むかどうかは国じゃなくて本人が決めることだって」

「ああ」

「それと似てます、母は偉大だから産んでくれたことに感謝しなきゃいけないっていうの。毒親だっているし、親になったことがないわたしには理解しがたいことだってあるから。感謝するかどうかは子どもが決めることなんじゃないですか」

「……そうだな」


押しつけがましいと思っているわけじゃない。

ただ、まっつんが導いた正解はあくまでまっつんのものであって、わたしはわたしなりにママと向き合う必要があるんだと感じた。