あ、宵だ。
気温が下がり、コートの黒が大半を占めるようになった構内で。遠目に捉えた姿を、俺はじっと眺めた。
宵の隣には、誰の姿もない。
……最近、あいつ、ひとりだよな。
少し前までは、咲菜ちゃんなり、誰なり、女の子がいたのに。とりとめのないことを考えていると、長谷が「洸平?」と俺を呼んだ。
一緒に歩いていたはずが、距離ができていたらしい。俺のほうを振り返って立ち止まった長谷と莉愛ちゃんに、へらりと笑って歩み寄る。
「ごめん、ごめん。なに?」
「なにっていうか、どうかした? 急に歩くの遅くなったけど」
「あー、わかった。宵くんでしょー」
からかう顔をした莉愛ちゃんが、さっきまで俺が見ていた方向に背伸びをした。
「うーん、どれかわかんないなー」
「いいよ、わかんなくて。最近、女の子連れてないんだなーって思って、ちょっと見てただけだから」
「ああ、それ。最近あんま遊んでないらしいよ」
「あ、そうなの?」
俺より先に反応した長谷が、ちょっと意外そうな声を出す。
「うん。咲菜ちゃんが言ってた。つまんなーいって」
「そうなんだ。本命でもできたのかな」
「まー、そうだろうね。ちなみに、わたしの予想は大人の女。自立したバリキャリって感じの」
「なんかちょっとわかるかも。でも、洸平はそのほうが安心するんじゃない?」
「へ?」
唐突に話を振られ、きょとんと声がデカくなる。その俺に、長谷は笑って繰り返した。
「前、言ってたじゃん。大学デビューで遊んでるから気になるんだって。ちゃんとした彼女ができたら、安心なんじゃないの?」
「え、……ああ、うん」
たしかに、言った覚えはある。……まぁ、宵をかまう行為を正当化する、ただの言い訳だったんだけど。俺はへらりとほほえんだ。
「まぁ、そうだよね。うん、安心かな」
もし、本当に、宵にちゃんとした彼女ができたというのなら。でも、ありえないだろうな。勝手に断じたもの、少しだけ気になって。ちらりと振り返る。
さっき、莉愛ちゃんはわからないと言ったけど、丸っこい後頭部を見つけることは簡単だった。
なんの自慢にもならない、俺の自慢。宵を一番に見つけて、「宵」と笑いかけてやることができること。
「声かけてくる? そういや、洸平、最近あんまり絡みにいかないよね」
「うん」
先に行ってようかの暗に、俺は首を横に振った。
「俺、うぜーし」
「え、なに。いや、たしかにうざ絡みっぽいときもあったけど。でも、そこが洸平のいいとこじゃん」
「そうだよ、洸平くん。べつに、本当にやばいうざさだって思ってたわけじゃなくて」
俺がそんなことを言うと思っていなかったのか、ぎょっとした様子でふたりがフォローを入れ始める。
いや、本当、お似合いで羨ましいわ。俺なんて、もう一ヶ月。どうしたらいいかわからないでいるのに。
あーあ、と言いたい気持ちを隠して、はは、と笑う。口からこぼれる息は白く、季節は冬になっていた。
気温が下がり、コートの黒が大半を占めるようになった構内で。遠目に捉えた姿を、俺はじっと眺めた。
宵の隣には、誰の姿もない。
……最近、あいつ、ひとりだよな。
少し前までは、咲菜ちゃんなり、誰なり、女の子がいたのに。とりとめのないことを考えていると、長谷が「洸平?」と俺を呼んだ。
一緒に歩いていたはずが、距離ができていたらしい。俺のほうを振り返って立ち止まった長谷と莉愛ちゃんに、へらりと笑って歩み寄る。
「ごめん、ごめん。なに?」
「なにっていうか、どうかした? 急に歩くの遅くなったけど」
「あー、わかった。宵くんでしょー」
からかう顔をした莉愛ちゃんが、さっきまで俺が見ていた方向に背伸びをした。
「うーん、どれかわかんないなー」
「いいよ、わかんなくて。最近、女の子連れてないんだなーって思って、ちょっと見てただけだから」
「ああ、それ。最近あんま遊んでないらしいよ」
「あ、そうなの?」
俺より先に反応した長谷が、ちょっと意外そうな声を出す。
「うん。咲菜ちゃんが言ってた。つまんなーいって」
「そうなんだ。本命でもできたのかな」
「まー、そうだろうね。ちなみに、わたしの予想は大人の女。自立したバリキャリって感じの」
「なんかちょっとわかるかも。でも、洸平はそのほうが安心するんじゃない?」
「へ?」
唐突に話を振られ、きょとんと声がデカくなる。その俺に、長谷は笑って繰り返した。
「前、言ってたじゃん。大学デビューで遊んでるから気になるんだって。ちゃんとした彼女ができたら、安心なんじゃないの?」
「え、……ああ、うん」
たしかに、言った覚えはある。……まぁ、宵をかまう行為を正当化する、ただの言い訳だったんだけど。俺はへらりとほほえんだ。
「まぁ、そうだよね。うん、安心かな」
もし、本当に、宵にちゃんとした彼女ができたというのなら。でも、ありえないだろうな。勝手に断じたもの、少しだけ気になって。ちらりと振り返る。
さっき、莉愛ちゃんはわからないと言ったけど、丸っこい後頭部を見つけることは簡単だった。
なんの自慢にもならない、俺の自慢。宵を一番に見つけて、「宵」と笑いかけてやることができること。
「声かけてくる? そういや、洸平、最近あんまり絡みにいかないよね」
「うん」
先に行ってようかの暗に、俺は首を横に振った。
「俺、うぜーし」
「え、なに。いや、たしかにうざ絡みっぽいときもあったけど。でも、そこが洸平のいいとこじゃん」
「そうだよ、洸平くん。べつに、本当にやばいうざさだって思ってたわけじゃなくて」
俺がそんなことを言うと思っていなかったのか、ぎょっとした様子でふたりがフォローを入れ始める。
いや、本当、お似合いで羨ましいわ。俺なんて、もう一ヶ月。どうしたらいいかわからないでいるのに。
あーあ、と言いたい気持ちを隠して、はは、と笑う。口からこぼれる息は白く、季節は冬になっていた。



