穢れた龍神と生贄の花嫁

(あっという間にいなくなってしまったわ……)

「由羅、今すぐ結界を強化しろ。どんな神もこの神域に入らせるな。水夜に会わせてはならん」
「かしこまりました」

 由羅の返事を聞くと、翔澪は水夜の手を取って屋敷の中へ入る。そして玄関先で翔澪はすぐに水夜を抱きしめた。まだ部屋にも向かっていないのに、突然で水夜は驚く。

「翔澪様?」
「すまない、立て続けに他の神に会って、あんな風に言われて嫌だったろう。せっかくの街での買い物も台無しだ」

 そう言って体を離し水夜の顔を覗き込む翔澪の表情はどこか悲しげだ。

「翔澪様、気にしないでください。私は翔澪様と街に行けて嬉しかったですし、あんみつもとっても美味しかったから台無しなんかじゃありません。それに、翔澪様が古くから知っている他の神様にもご挨拶ができて、私は嬉しかったですよ」
「……嬉しかった?」

 急に翔澪の纏う空気が変化する。少し怒気をはらむような声に、水夜は驚いて肩を揺らした。

「他の神に会えて嬉しかった?俺は水夜を奪われまいと必死だったのに」
「それは……」
「まだ他の神たちも水夜を狙うかもしれない」

 ギリ、と水夜の肩を掴む翔澪の手が食い込む。翔澪の様子に水夜は目を見張り、すぐにハッとして翔澪を見つめた。

「そういえば翔澪様、火の神様がおっしゃっていた、翔澪様の力がまだ完全に定着していないというのはどういうことですか?」