穢れた龍神と生贄の花嫁

 クスクスと笑う水夜、そしてそれに甘えるような仕草を見せる翔澪。そんな二人を由羅はほほえましいという表情で見つめ、火の神は呆れたような顔で見ていた。

「あの龍神がこんなに骨抜きにされているとは、むしろ気持ち悪ささえ感じるな。そう目の前でべたべたされてはかなわん。今日は諦めるとしよう」
「今日は?」

 火の神の言葉に、翔澪はドスの効いた声で聞き返す。だがそんな恐ろしい声に臆することなく、火の神は挑戦的な視線を向けた。

「そんなに相思相愛なくせに、花嫁にはまだお前の力が完全には定着していないように見える。それでは隙を見て他の神が横恋慕できてしまうぞ。お前だってわかっているだろう。さっさと定着させてしまえばいいものを」

(力が完全に定着していない?)

 水夜が不思議そうな顔をすると、翔澪の水夜を抱きしめる力が強くなった。

「私にその花嫁を横取りされたくないなら、さっさと力を定着させてしまえ。まさかお前、男神のくせに不能なわけではあるまいな」
「はあ!?貴様、ふざけるなよ」

 翔澪が怒鳴ると、火の神は鼻で笑い、手を振る。

「それではまたな、龍神の花嫁。次会う時は、龍神の力が完全に定着しているかもしれん。そうなれば、もうお前に気安く触れることもできぬかもしれんな」

 そう言って豪快に笑うと、火の神は炎の渦に囲まれて消えていった。