穢れた龍神と生贄の花嫁

 翔澪を故意に穢れさせ邪神にしようとした人間がいる。それを知った翔澪は怒りがおさまらない。そんな翔澪を見て、風神は静かに首を横に振った。

「気持ちはわかる。俺だって許せないよ。でも今はその怒りを収めた方がいい。さすがにそんなに力が溢れ出てしまっては、せっかく隠している神の力も姿もバレてしまうだろう。花嫁が人間たちの好奇の目にさらされてしまってもいいのかい」

 風神の言葉に、翔澪はハッとして周囲を見渡し、すぐに水夜を見る。不安げな水夜の表情に、翔澪は目を見開いて水夜を抱きしめた。

「すまない、驚いただろう」
「いえ、私は大丈夫です。そんなことより、翔澪様は大丈夫ですか?」

 心配そうに翔澪を見上げる水夜に、翔澪は愛おしさでいっぱいになる。そんな二人を、風神と雷神は微笑ましそうに眺めてから目を合わせ頷いた。

「話は済んだ。俺たちはそろそろ帰るよ」
「今度またゆっくり話をしよう、花嫁殿」

 二人が挨拶をして立ち上がったので、水夜は慌てて二人を見る。

「あ、ありがとうございました。またお会いできるのを楽しみにしています」

 水夜の言葉に、翔澪はムッとして水夜を隠すように腕の中に囲った。

「もう来なくていい。また何か情報があれば文で寄越せ」
「はいはい、まったく、龍神のくせに嫉妬深いな」

 そう言って、苦笑しながら風神と雷神は店を出て行った。

(行ってしまった……)

残された水夜と翔澪は空いた席をただ黙って見つめていたが、翔澪が静かに口を開いた。

「……俺たちも屋敷へ帰ろう」