穢れた龍神と生贄の花嫁

「それから、もう一つ大事な話がある」
「……なんだ、まだあるのか」

 翔澪がうんざりした顔でそう言うと、風神は厳しい顔で翔澪を見る。その表情にただならぬ気配を感じ、翔澪も真剣な表情になった。

「邪神の気配が濃くなっている。もうすぐ誕生するかもしれない」

 風神の言葉に、翔澪の顔は一層険しくなる。先ほどまでニコニコと屈託のない笑顔をしていた雷神も真剣な顔で翔澪を見ていた。

「お前もあのままであればいずれ邪神になっていたかもしれない。それはわかっているだろう」
「ああ」
「だが、お前は花嫁のおかげで邪神にならずに済んだ。しかし、お前の穢れが消え始めたのと同時に、他で強い穢れが生まれ始めている」
「どういうことだ?」

 翔澪が尋ねると、風神は周囲の人々をゆっくりと見ながら話を続ける。

「お前のように強い力を持つ神ではなく、そもそも人の欲で生み出された力の弱い神々やそれに仕えていた精霊たちが穢れ、その穢れが一か所に集まっている。どうやら人間が関係しているらしい」
「人間が?」

 風神の言葉に翔澪が疑問の声を上げると、水夜も驚いて風神を見つめる。

「人間がわざと穢れを増やしそれを集め、邪神を創ろうとしているということだ」
「……人間ごときにそんなことができるのか」