穢れた龍神と生贄の花嫁

 水夜は驚いて盛大に首を傾げ、翔澪は二人の話を聞いて険しい顔になった。

「ああ、俺たち神は自由だから他の神の花嫁も自分の花嫁にするんだ。花嫁を一人に決めることもないしね。気に入ったものは自分のものにしたい、当然のことだろう」

 風神は爽やかにそう言うが、言っている内容は全く爽やかではない。あまりの衝撃に水夜は目を丸くしていると、翔澪は水夜を腕の中に囲い込む。

「水夜は誰にも渡さん。俺だけの花嫁だ。近寄ろうものなら殺すぞ」
「おお、本気だ」
「本気だな」

 風神と雷神は目を合わせて肩をすくませる。それから真剣な顔で翔澪を見た。

「お前はそのつもりだろうが、もうその花嫁の噂は神々に広まっている。一目見たさに他の神もやって来るだろうし、見たら絶対に気に入るだろうよ」
「俺たちも気に入ったからな。一緒にいるだけで心地よい、こんなに清らかな気を持つ人間はめったにいない。計り知れない魅力の持ち主だ」

 二人の言葉に、翔澪の水夜を抱きしめる力が強まる。水夜は思わず翔澪の着物をギュッと握り締めた。

「大丈夫だ、水夜は誰にも渡さん。俺が絶対に守って見せるから安心しろ」
「翔澪様……」

 翔澪の瞳は燃え滾るほどのような熱さを宿しているが、その熱さは水夜の不安を焼き払うかのようだ。水夜が小さく微笑んで頷くと、翔澪も微笑んだ。