穢れた龍神と生贄の花嫁

(そういえば、翔澪様を見ても誰も驚いた顔をしないのはどうしてかしら?)

 翔澪ほどの美しさなら、騒ぎになってもおかしくない。それなのに、すれ違う人々も店の中でも誰も翔澪に注目する人がいない。不思議そうに思って水夜が翔澪を見上げると、翔澪は首を傾げた。

「どうしかしたか?」
「翔澪様はこんなにも美しいのに、誰も驚かないのが不思議で」
「ああ、そのことか。人の姿で街に出る時は、目立たないように術をかけている」
「術、ですか?」

 水夜が首を傾げて聞き返すと、翔澪は頷く。

「人の姿になっているとはいえ、俺は神だ。神が人の前に姿を現わせば、それだけで人々に大きな影響を及ぼす。それは良い意味でも悪い意味でもだ。神の力に慣れない人間は倒れてしまい、最悪そのまま死んでしまう可能性だってある」
「そんなにですか!?」
「ああ。だから、術をかけて人々に影響が出ないようにしている。そのおかげで、この見た目でも人々には感知されず、そこらへんにいる普通の人間と同じように認識されるんだ」

 翔澪の話を聞いて、水夜はなるほど、と納得した。ふと、翔澪がひとつの店先に目を向けると水夜を見て微笑む。