穢れた龍神と生贄の花嫁

「……ど、どういうこと?私の神力が気持ち悪い……?水夜が、龍神に気に入られてる?」

 翔澪たちがいなくなった後、珠奈がぽつりと呟く。それから、清四朗を睨みつけた。

「どういうことよ!どうして私じゃなくて、あんな役立たずの水夜が龍神様の側にいるのよ!あんな綺麗な着物を着て、大切そうに扱われて!」

 水夜の代わりに龍神の元へ行けば、水夜のように大切に扱われるのではないかと思ったのに、龍神はむしろ珠奈を拒否する様な態度を取った。あまりの待遇の差に、珠奈は我慢ならない。

 珠奈は怒りに任せて砂を握り締め清四朗の背中に投げつける。清四朗は振り返り、珠奈を見て怒号を飛ばした。

「黙れ!一体どういうことか、こっちが聞きたいわ!お前の神力が必要ないと言われたんだぞ!水夜が戻って来なければ、青条家はおしまいだ!お前が穢れを浄化できないばっかりに!クソッ!クソが!」

 喚き散らかす清四朗を、珠奈は肩を震わせ憎らしそうに睨みつける。そんな二人の背後から、砂を踏みしめる足音がした。

「これは青条家のご当主様、そして巫女様。ずいぶんと荒れていらっしゃる」
「ああ!?」

 声のする方を見て清四朗は声を荒げたが、すぐに目を大きく見開き、青ざめる。

「あ、あなた様は……!」

 清四朗たちの近くに、真っ黒なスーツ姿の男たちが数人立っていた。その真ん中に、二十代後半だろうか、セミロングの黒髪を一つに束ね、モデルかのようなスラリとした体形の男がいた。

「まさか青条家がこんなことになってるとは思いもしなかったよ。この状況を国も見過ごすわけにはいかないんだよね。それで、俺がこうしてわざわざ足を運ぶことになったんだけど」

 真っ黒な扇子を片手に持って開いては閉じ、開いては閉じを繰り返している。それから、清四朗の前まで来ると、扇子で顎を抑えて顔を上に向けさせる。男を見る清四朗はただ怯え震えていた。

「屋敷で詳しい話を聞こうか?こちらも君たちに頼みたいことがあるからね」

 そう言って、男はにっこりと微笑んだ。