穢れた龍神と生贄の花嫁

(え、まさか、そんな……)

 水夜が怯えたように珠奈、そして両親へ視線を向けると、清四朗はにんまりと微笑んだ。

「よかったな、水夜。使い道のないお前がついに役に立つ時が来た。お前が龍神の生贄、花嫁だ」
「私が、生贄の、花嫁……?」
「お姉様に拒否権なんてないわよ?国からの命令なんだからこれが出来なかったらお父様の立場も、この家の立場も危うくなるわ。そうなったらお姉様のせいよ?」

 珠奈は水夜の目の前まで来るとしゃがみ込み、水夜の目を覗き込む。珠奈の目には、怯えて震える水夜が映っていた。

「わ、私は……」
「だーかーらー、お姉様に拒否権はないって言ったでしょうが!」

 水夜の髪の毛を掴んで思い切りひっぱると、珠奈は水夜を床に叩きつけた。

「っ!!」
「ああ、そうだわ、龍神様の花嫁になるんだったら見えるところに傷をつけちゃいけないわね。ごめんなさい、気づかなかったわ。さ、話しは済んだことだし、食事にしましょう!」

 両手を合わせて嬉しそうにそう言うと、珠奈は自分の席に戻って食事を始める。万里絵も珠奈に続いて食事を始め、水夜を見ようともしない。

「龍神様の元へ行くのは三日後だ。それまでに色々と準備しなければいけないな。忙しくなるぞ」

 そう言って満足そうに頷くと、清四朗も水夜を気にすることなく食事を始めた。

(私が、龍神様の、生贄の花嫁……私には、拒否権はない。生贄になることが、私が唯一役に立てること……)

 ぼんやりとした思考のまま水夜はゆっくりと起き上がり、部屋の隅に大人しく正座した。