穢れた龍神と生贄の花嫁





「はあ!?どうして私が龍神様の生贄にならなきゃいけないの!?」

 珠奈の怒声が屋敷内に響き渡る。万里絵は珠奈と水夜たちの父親である清四朗を交互に見てオロオロしているが、清四朗は腕を組んで眉間に皺を寄せていた。

 珠奈と両親が食卓を囲んでいたその日、清四朗が珠奈へ龍神の生贄になるようにと告げた。配膳をしていた水夜は珠奈の怒声に驚き思わずお膳を落としそうになるが、そんなことをすれば余計に珠奈の怒りが増幅されてしまう。水夜はなんとか落とさないように堪え、細心の注意を払いながら配膳を行なった。

「隣町で頻繁に災害や疫病が流行っているのは知っているだろう。国から調査依頼が来てな、調べたところどうやら龍神様の仕業のようだ」

 龍神を祀っているはずの湖はどす黒く濁り、そこから邪気が発せられ町で災害や疫病を招いているというのが父親の見解だった。

「隣町も我が青条家の管轄だ。国からなんとかしろと言われれば、なんとかしなければいけない」
「だからって、大事な娘を生贄として差し出すの!?信じられない!」

 珠奈は目を大きくひん剥いて大声を出す。配膳を終え、後ろの方で小さくなって控えめに正座していた水夜は、驚いてビクッと肩を震わせた。

「本来であれば巫女の舞で清浄化すれば済む話だが、神様が人々の生活を脅かすほどの状態になっているのであれば巫女を生贄の花嫁として差し出すしかない。お前もこの家の巫女ならそのくらいのこと知っているだろう」
「だったらなんでそんな状態になるまで放っておいたのよ!そうなる前に私に舞を踊らせればよかったでしょう!」