穢れた龍神と生贄の花嫁

(はあ、いいお湯だな)

 水夜はお湯に浸かりながらぼんやりと天井を見つめていた。実家にいたころは残り湯を桶で体にかけるだけ、髪の毛も数日に一度しか洗うことができなかった。きちんと全身を荒い、こんなにもゆっくりとお湯に浸かることができるなんて夢を見ているかのようだ。
 体のあちこちにできた傷に染みるかと思っていたが、意外にも痛みはない。しかも身体中がほぐれてじわじわと疲れが無くなっていく。

(もしかして神様がいれてくれたお湯だから、癒しの効能があるのかもしれない)

 龍神様へ生贄として差し出され、食べてもらうこともできないと知って自ら命を絶とうとしたが、死ぬくらいなら一緒に来いと龍神様が言ってくれた。しかも、水夜が必要だと言ってくれたのだ。

(神力を持たないこんな私を、翔澪様は必要としてくれる……)

 一緒にいることで力が戻って来たと言っていた。おそらく掃除をすることで神域が清められ力が戻っているのだろう。まだ掃除ができていない箇所には穢れが溜まっていた。自分のすべきことは屋敷を隅々まで綺麗にすることだ。必要としてくれるのだから、翔澪の役に立ちたいと、水夜は湯船の中で意気込んだ。