穢れた龍神と生贄の花嫁

 まさか、翔澪の身に何かあったのだろうか。力が戻って来たと言っていたけれど、力を使いすぎて倒れてしまったのではないか。慌てて水夜がリビングから出ると、廊下の窓の外に黒いススのような塊がうごめいている。その黒い塊は、窓に触れた瞬間にはじけるように飛び散り、消え去った。

(さっきの音は、もしかしてこの音?)

 屋敷の一部が綺麗に浄化されたので、穢れの塊が屋敷に近寄れなくなっているようだ。ふと、廊下の向こう側に黒い塊がズズズと床を這うようにして動いている。まだ掃除が終わっていない場所に、黒い塊が集まりつつあるのだ。

 水夜が驚いて後ずさりすると、ポタリ、と目の前を何かが落下した。

(えっ?)

 何が降って来たのだろうかと水夜が上を見上げると、天井に黒いススのようなものが壁の隅を這っているのが見えた。水夜が目を大きく見開くと、その黒くうごめくものは一斉に水夜へ向かって飛びついてくる。

(!)

 水夜は驚いて両手で頭を庇いながらしゃがみ込もうとした、その時。