穢れた龍神と生贄の花嫁

(は、恥ずかしい……!)

 水夜が俯くと、翔澪は水夜の頭を優しく撫でる。それから周囲を見渡して嬉しそうに微笑んだ。

「綺麗な部屋の中で自分以外の存在と一緒にいるのは久しぶり過ぎて不思議な感じがするな。だが、悪くない」
「そういえば、翔澪様はこの屋敷でお一人なのですか?おつきの方は?」

 この屋敷に翔澪と水夜以外の誰かがいる気配はどこにもなかった。ふと水夜が尋ねると、翔澪は悲し気に眉を下げる。

「俺に力があった頃は、精霊が自然と具現化して側に仕えていた頃もあった。力がなくなり穢れが生じるようになってからは、ここに精霊は存在できなくなったからそれ以来ずっと一人だ」
「そうだったんですか……」

(あんなに薄暗く汚れた場所にたった一人でいた翔澪様……とても心細かったんじゃないかしら)

 神様にそういう感情が果たしてあるのかと言われればわからない。だが、人の姿をした翔澪は思った以上に表情豊かで、だからこそ水夜は翔澪のこれまでについても気になってしまうのだ。

「これからが私がずっと一緒にいます。だから、寂しくありません。もう大丈夫ですよ」

 水夜は両手をグーにして大きく頷き、微笑む。その笑顔はその場を明るく照らす光のように見えて翔澪の胸は大きく高鳴った。

「水夜……!」

 翔澪は水夜の両頬を両手で包みこみ、額と額をくっつけて嬉しそうに微笑む。

「たった一人の人間にこれほどまで心を揺り動かされ胸が高鳴ることは初めてだ。水夜は俺にとって特別だ。ありがとう、水夜」