穢れた龍神と生贄の花嫁

 翔澪は盛大に顔を顰め、大声を出す。驚いて水夜が肩を揺らすと、翔澪はこほん、と咳ばらいをした。

「大声を出してすまない。だが、その柄の着物が二着だけ?そんなボロボロになるまで……お前は本当に苦労して生きていたのだな」

 悲し気に翔澪は水夜の頬を優しくなでる。

「よし、普段用に綺麗な着物をあとで創ろう。どんな色でどんな柄がいいか後で教えてくれ」
「えっ、そんな!私はこれでじゅうぶんです」
「だめだ!神の花嫁ともあろう人間が、そんな服装では俺が許さない。綺麗なお前には綺麗なものが似合うのだからな。……そうだ」

 そう言って、翔澪は片手を水夜の前に出す。すると、翔澪の掌が輝きだし、そこには美しいオーロラ色のリボンが現れた。

「掃除をするなら髪の毛が邪魔になるだろう」

 翔澪は水夜の背後に回り、水夜の髪の毛を優しく集め一束にし、リボンで結ぶ。そして水夜の前に来ると満足そうに微笑んだ。

「うん、似合っている」
「ありがとうございます……!」
「よし、では始めるか」

 そう言って掃除道具に手を伸ばす翔澪を見ながら、水夜は言いようのない高揚感と多幸せ感で胸がいっぱいになる。

(こんなによくしていただくなんて、私は幸せ者だわ。お礼のためにも精一杯掃除しよう。神様の住むところなのだから、うんと綺麗にしなくちゃ!)

 水夜は周囲を見渡すと、張り切って掃除を始めた。