全てがキミだった


「……ちゃんと、説明してくれなきゃ、わかんない」

膝の上で握りしめた手にぎゅっと力を込めながら、私はぽつりと呟いた。

……どうして、私はこんなにも公平に弱いんだろう。

怒っていたはずなのに、彼のあのあざとい上目遣いひとつで毒気を抜かれてしまうなんて。
自分の呆れるほどのチョロさと意気地なさには、もう嫌気が差してくる。

急に呼び出しておいて放置され、何が起きているのか全く説明されていなかったことが怒りの原因だと察した公平は、「ハハッ」と隣で声を上げて笑った。

「なんだよ、そんなことかよ。ごめんごめん」
「笑い事じゃないし」
「いや、たまには太陽の下で思いっきり体を動かすのもいいかなと思ってさ。お前、いっつも部屋に引きこもってそうだし」
「放っておいてよ。ていうか……公平って野球やってたの?」

前から運動神経が良いのは知っていたけれど、バットの構え方や指示の出し方があまりにも様になっていたから、気になって尋ねてみた。

「部活とか本格的なやつじゃないけどな。小学生の頃から、こうやって近所のガキども集めてよくやってたんだよ。いつもはもっと広い河川敷とかでやるんだけどさ……今日は、お前も誘おうと思ったからここにしたんだ」
「え……?」
「お前の家から河川敷まで歩かせるのは、流石にこの暑さじゃキツいだろ? だから、ここならギリギリ歩いて来られるかと思ってさ」

悪びれる様子もなく、ごく自然にそう口にした公平の言葉に、胸の奥がドクンと大きく跳ね上がった。

『ここじゃなきゃ意味がない』

さっき彼が言っていた言葉の本当の意味が、じわじわと頭の中に染み渡っていく。

私が熱中症にならないように。
猛暑の中でも来られるように。
彼はわざわざ自分のホームグラウンドではなく、私の家から歩けるこの公園を選んでくれてたんだ。

「おらっ、ケンジ! だらだら走ってんじゃねえ! もっと足を前に出せ!!」

急にベンチから身を乗り出し、グラウンドを走る男の子に向かって大きな声を張り上げる公平。
その輝く汗を浮かべた横顔は、そこにいる小学生たちと何ひとつ変わりないくらい、どこまでも真っ直ぐで無邪気な少年そのものだった。

その横顔があまりにも眩しくて、私は何も言えなくなったまま、ただ静かに公平のことを見つめ続けることしかできなかった。