ダイヤモンド型のベースを最後の一歩まで力強く踏み締め、見事に一周走り切った公平が、汗ばんだ額を腕で拭いながら得意げな表情で私の座るベンチへ向かって走ってきた。
「暑い?」
「少しね」
「このベンチの近くに、もっとデカい木でも植えればよかったのにな。それか、雨もしのげるくらいの大きな屋根を付けるか」
「そだね」
「え……何。ちょっと不機嫌?」
私の隣にドカッと勢いよく腰を下ろした公平は、汗の匂いと太陽の熱気を纏わせたまま、ムスッとして正面を見つめる私の横顔をじっと覗き込んできた。
返事をせずに意地になって視線をそらし続けていると、彼の呼吸がわずかに乱れた。
「え……ちょ、待って。なんで怒ってんの? 俺、なんかした?」
普段ならどんな状況でも余裕を崩さない公平が、珍しく本気で焦り始めたらしい。
私の顔色を伺うように、低いベンチの上で少しだけ体を丸め、下から覗き込むような上目遣いで私を見つめてくる。
汗で額に張り付いた前髪と、濡れた黒い瞳。
……バカ。
心の中で、ぽつりと毒づく。
この卑怯者。
上目遣いなんていう破壊力のある仕草は、本来なら女の子の特権のはずだ。
男のくせに、そんな仕草をしたって。
そんな瞳で私を見つめたって、騙されたりなんか――……。
胸の奥がキュッと強く締め付けられ、さっきまで膨らんでいた怒りの風船が、あっけなく小さな音を立ててしぼんでいくのを感じていた。


