「早かったな」
蛇口から勢いよく噴き出す水をゴクゴクと飲んでいた公平が、顎から透明な水滴をポタポタと滴らせながら顔を上げた。
「急いで来たんです。見てよ、汗だく」
「俺に感謝しろよ。おまえんちから少しでも近い場所を選んでやったんだからさ」
公平は口元に付いた水滴を Tシャツの袖でガシガシと雑に拭いながら、太陽に負けないくらい眩しい、私の大好きなあの笑顔を見せた。
「でもさ、徒歩で10分くらいかかるよ?猛暑日には結構遠いんだけど。もっと家のすぐ近くにも公園あるのに。絶対そっちの公園でよかったじゃん」
少し汗ばんだ首元を指先でパタパタとあおぎながら文句を言うと、公平は水道の蛇口をキュッと締めて、ニッと口角を上げた。
「ダメに決まってんだろ。ここじゃなきゃ意味がないの」
「え、なんで?」
「ここが一番広いし、木陰もあって涼しいじゃん。それに……ほら、あいつら」
公平が顎でしゃくった先では、子どもたちが汗だくになりながら夢中でボールを追いかけていた。
「とにかく、ここが一番面白いんだよ。文句言うな」
まったく、相変わらずの自分勝手な理由だ。
私は可笑しくなって、ほんの少し嫌味っぽく言葉を返してみる。
「はいはい。で、どうしたの? 急にこんなところに呼び出したりして」
「おまえがどうせ家で暇そうにしてるだろうと思って、誘ってやったんだよ」
「もし、私に先約とか用事があったらどうするつもりだったの?」
少し眉をひそめて腕を組むと、公平はフンと鼻で笑い、悪戯っぽい瞳でわたしを見下ろしてきた。
「強がんなよ。どうせ予定なんかなくて暇だったくせに」
図星を突かれてぐうの音も出ない私を見て、公平は満足そうに八重歯をのぞかせて笑った。
その無邪気で誇らしげな横顔から、私はやっぱり目を離すことができずにいた。


