全てがキミだった


「懐かしいな」

静けさを破って、やっぱり一番に口を開いたのは公平の方だった。
高校時代からずっとそうだ。
ふたりの間に気まずい沈黙が降り積もりそうになると、決まって公平から軽やかに話題を振り、場を和ませてくれていた。

「……うん」

私はひざの上で固く握りしめたバッグの取っ手に力を込めながら、短くそれだけを返した。

「なんかさ、急にここに来たくなって。おまえと」

公平はベンチの背もたれに少し体を預け、そっと隣の私を見つめて微笑んだ。

頭上から容赦なく肌を刺す夏の強い太陽と、その光を浴びてキラキラと輝く彼の目元。
その眩しすぎる笑顔が、かえって私の胸の奥をチクチクと痛ませる。

……ほんと、ずるいよ。
いつだって、公平だけ余裕があって。

ふと、綾が言っていた『公平はホストにむいている』という言葉が脳裏をよぎった。

本当にそうだ。
公平はきっと、恐ろしいほど指名を取る売れっ子ホストになるだろう。
相手が欲しい言葉を、欲しい瞬間に、こんなにも自然に投げかけてくるんだから。

その微笑みひとつで人の心を簡単に惑わし、翻弄してしまうなんて、あまりにも卑怯だ。

太陽の熱気とはまた違う熱が頬に上ってくるのを隠すように、私はぎこちなく目線を足元へ落とすことしか出来なかった。