全てがキミだった


「ごめん。急に呼び出して」

約束の公園に到着すると、日差しを遮る大きな樹の下、古びた木製のベンチに腰かけていた公平が、私の足音に気づいてすぐに立ち上がった。
青く澄み渡る昼下がりの空から、眩しい陽光が木の葉の隙間を縫って、彼の肩や足元に木漏れ日の斑点を落としている。

私はゆっくりと公平の元へ歩み寄りながら、大丈夫だよという意味を込めて、ううんと小さく首を横に振った。

……この場所だ。

この6年という年月の中で、私は何度この公園の前を通り過ぎただろう。

昼間の明るい陽射しの中で見るこの景色を、仕事の帰り道や休日の買い物ついでに、わざわざ遠回りして何度も通りかかっては視界に収めていた。
けれど、どうしても足がすくんで、敷地の中に一歩を踏み出すことだけは出来なかった。

遠くから横目で静かに眺めるのが精一杯。
だってここは、眩しいくらいに輝いていた記憶と同じくらい、息が詰まるほど切ない思い出が色濃く残っている場所だったから。

時折吹き抜ける昼のぬるい風が、ブランコの鎖をカサリと小さな音で揺らす。

私は胸の奥の鼓動を押し殺しながら、6年という長い月日を経て、静かにあの頃と同じベンチへと腰掛けた。
木肌の温もりと、隣に座る公平の気配が、同時に肌へと伝わってくる。
ずっと止まっていた時間が、太陽の光の下で、静かに、そして確実に動き出そうとしていた。