全てがキミだった


私が俯きながら消え入るような声で言うと、公平は何も言わずに、ゆっくりと私に背中を向けた。

夕暮れ時の静寂が漂う廊下。
両手をスラックスのポケットに突っ込んだまま、遠ざかっていく公平の背中を、私はただ息を詰めて見送ることしか出来なかった。

あぁ……。
なんだ。
そっか、彼にとって私は、何の興味もないただのクラスメイトなんだ。

たまたま目の前で倒れたから、ただ運んでくれただけ。
そこに、私が勝手に夢見ていたような特別な思いなんて、最初から一欠片もなかったんだ。

一体、私は何を期待していたのだろう。
あまりにも惨めで、馬鹿すぎる――……。

ポツンと取り残されたその場に、自分の居場所すら見失ったまま、私は所在なくただ佇んでいた。

悔しさと恥ずかしさで視線を足元に落とすと、橙色に染まるリノリウムの床の上に、カツン、カツンと離れていく公平の足音だけがどこまでも鮮明に響いていた。

その規則正しい足音は、まるで私の淡い期待をひとつずつ踏みつぶしていくかのように、あまりにも冷たく、悲しげに校舎へ反響している。

振り返りもせず去っていく彼の背中は、どこまでも素っ気なく、そして遠かった。