「あんたとは違うのよ。実家や地元の友達にだって、たまには会いたくなるでしょうに」
「そうかなぁ。私が綾の立場だったら、せっかくの休みに移動なんてしないで家でずっとゴロゴロしてるけどな」
うちの次女である綾は、幼い頃からの夢だった美容師になるために実家を出た。
ここから新幹線で1時間ほどの距離にある都市部で就職し、何か大きな出来事があるたびにLINEで近況を知らせてきたり、たまには手書きの手紙を送ってきたりと、本当にマメな性格をしている。
その手紙が届くたび、お母さんは嬉しそうに冷蔵庫のドアにマグネットで貼りつけ、家事の合間に愛おしそうに眺めていた。
「綾が帰ってきたら、ついでに私の髪も少し整えてもらおうかしら」
お母さんが弾んだ声でそう言った瞬間、フライパンからジューッという香ばしく食欲をそそる油の音が響き渡り、それに呼応するように私のお腹がぐぅっと小さく鳴った。


