全てがキミだった


目の前にいる大好きな人が、遠い記憶の中のあの頃の姿と鮮やかに重なっていく。
胸元のボタンをひとつ外した白いシャツの隙間から、男らしい鎖骨がチラチラと覗くたび、私の鼓動は痛いほどにかき乱されていた。

……ズルいよ、公平は。

あの頃からそうだった。
高校生の男の子特有のどこか無防備で、けれど女の私よりもずっと惹きつけられるような独特の色気が、公平にはあった。
大人になった今の公平は、その色気に落ち着きまで纏っていて、目線を合わせるだけで眩暈がしそうになる。

「おまえさ、体育のサッカーやってるとき、頭にボールぶつけて脳震盪起こしたの覚えてるか?」
「あ……うん」

気まずさに小さく頷くと、公平は懐かしそうに目を細めた。

「あの時、女子のコートの方から急に悲鳴が聞こえてさ。何事かと思って慌てて見に行ったら、お前がグランドの真ん中で思いっきり倒れてんだもん。……あん時俺、マジで焦ったんだからな」
「……だって、急にボールが飛んできたんだもん」
「あんなの、かわせるだろ?普通。お前、どんだけどんくさいんだよ」

そう言って、公平が少し困ったように、けれど愛おしそうにくしゃりと笑った。

そのあたたかな笑顔に胸がキュッと締め付けられた瞬間、カチャリと静かな音を立てて、テーブルの上に先ほど注文したミートスパゲティとドリアが運ばれてきた。

湯気とともに広がる香ばしい匂いが、二人を包んでいた甘く切ない沈黙をほんの少しだけ押し流してくれた。