全てがキミだった


「池内、最近どう?」

グラスの氷をガラガラと揺らしながら、公平が気さくに尋ねてくる。

「あ、うん……あの頃と、全く変わりなし」
「ははっ、ドジなまんまってこと?」
「……違うよ。ドジなんかじゃない」

必死にムッとした表情を作って抗議してみせるけれど、声の張りはどこか頼りない。

「いや、おまえはドジだよ。さっきも一人で勝手にこけそうになってただろ? ……忘れたのか? おまえ、高校の時の体育の授業で、怪我をしなかった日なんて一日もなかったじゃん」

呆れたように、けれどどこか愛おしそうに笑う公平の言葉。
その瞬間、はっと息が止まり、瞼の裏側にあの頃の鮮烈な風景が一気に弾けた。

――17歳の、私達。

真夏の眩しい日差しの中、ダブダブの体操着を着て、汗で張り付く前髪も気にせずにグラウンドをがむしゃらに走っていた日々。
泥だらけになって膝をすりむくたび、公平は「またかよ」なんて呆れ顔で、保健室まで嫌々付き合ってくれたんだ。

過去に縛られ、ずっと暗闇の中で彷徨い続けてきたこの6年間の中で、どの瞬間よりも鮮明に、色鮮やかにあの日々が蘇っていく。
砂利の匂い、青く澄み渡った夏空、そして、隣で汗を拭いながら笑っていた17歳の公平の横顔。

ああ……私、本当にこの人のことが好きだったんだ。

胸の奥がキュッと締め付けられるような懐かしさと痛みが押し寄せ、私は言葉を失ったまま、ただ目の前の公平を見つめ返すことしかできなかった。