全てがキミだった


私達は、コンビニから歩いてすぐのところにある、見慣れたチェーン店のファミレスへと移動した。

まだ夕方の浅い時間帯だというのに店内は家族連れや高校生グループで賑わっていて、食器の触れ合う音や賑やかな話し声が充満している。
その喧騒の中に混じりながら、私は逃げ出したいような心地で、ぎこちなくボックス席のソファへと腰を下ろした。

テーブルを挟んで、目の前に座る愛しい人。
あまりにも近すぎるその存在感が眩しくて、どうしてもまっすぐ顔を見ることができない。

けれど、破裂しそうだった胸の鼓動とは裏腹に、自分でも驚くほど冷めた部分が頭のどこかに残っていた。
6年前ならもっと取り乱していただろうに、歳を重ねた分だけ、取り繕う術を覚えてしまった自分がどこか哀しかった。

「なんでも頼んでいいぞ。おごってやるから」

公平は少し大人ぶった手つきで、テーブルの端にあった大きなメニュー表をすっと私に差し出してきた。

「……ありがと」

私は遠慮がちにそれを受け取り、パタリとページを開く。
自分の動揺を隠すための防波堤にするように、メニューの写真をじっと見つめた。

公平も同じように手元のメニューに視線を落とし、指先でトントンと表紙を叩いている。
その指の形も、爪の形も、昔の記憶のままだ。

「俺、ミートスパゲティ。……池内は?」
「……私は、ドリアで」
「了解。――すみませーん」

公平は迷いのない動作で片手をすっと上げ、遠くにいた店員を呼び寄せた。
手際よく注文を済ませ、店員が「少々お待ちください」と去っていく。

テーブルの上に残されたのは、お冷のグラスが二つ。
そして、6年という空白の時間を抱えた私達だけだった。

グラスの表面についた水滴が、スーッとひとつ、テーブルの木目に垂れ落ちる。

料理が運ばれてくるまでの、短くも息の詰まるような沈黙が、ふたつの席の間に静かに広がっていった。