全てがキミだった


緊張のあまり、喉の奥がキュッと縮こまって声が震える。

立つことだけで精一杯で、私の足はまるで「歩く」という基本的な動きを忘れてしまったみたいに重かった。

逃げ出したいような、このまま彼の胸に飛び込んでしまいたいような、狂おしい感情の渦。
私は必死で呼吸を整えながら、一歩、また一歩と足を上げ、前を行く公平の背中に近づいていく。

――と、その時だった。

緊張で固くなっていた足元が急に絡まり、私は盛大に体勢を崩してしまった。

「――わっ!」

前のめりに倒れ込みそうになり、慌てて手足をバタつかせて体勢を整えようとする。
コンクリートを擦る派手で慌ただしい足音に、公平がくるりと足を止めて振り向いた。

「なにやってんだよ」

あの頃とまったく同じように、少し呆れたように眉間にシワを寄せる公平。
急激に視界が近づき、彼のふわっとした髪の揺れや、大人びた顔立ちが目の前に迫る。

「ほんとにドジだな、おまえ」

そう言って、公平はあごのあたりをピクピクと歪ませながら、くしゃりと優しく笑った。
6年という長い年月が一瞬で吹き飛び、あの日々へと引き戻される感覚に、私の心臓はまた激しく音を立て始めた。