全てがキミだった


「池内っ」

バックヤードで着替えを済ませ、コンビニの自動ドアをくぐった瞬間、駐車場から声がした。
コンクリートの端に立ち、スマホをいじっていた公平がゆっくりと顔を上げる。

……あ。

肩にかけたトートバッグの持ち手を、思わずギュッと強く握りしめた。
視線を反射的に地面へと落としてしまう。

変に緊張して、胸の奥が痛いほど高鳴っていた。
ずっと逢いたかったはずなのに。
嬉しいはずなのに、私の足はまるで地面に貼りついてしまったみたいに、少しも上がろうとしてくれなかった。

「今から用事ないだろ? なにも」

公平はそう言って、どこか遠慮がちに唇を緩めて微笑んだ。

……変わってる。
でも、変わってない。

高校2年のあの頃の公平は、少し髪を遊ばせた少年らしさが残る、どこか瑞々しく華やかな雰囲気を纏っていた。
けれど、6年の歳月を経た今の公平は、すっきりと垢抜けた輪郭に洗練された大人の色香が滲み出ている。
男らしさが増した分、あの頃よりも少しだけ表情がシャープになり、落ち着いた雰囲気を醸し出していた。

けれど、あごのラインを少しだけ引き上げて、悪戯っぽく微笑むその顔は……あの頃のままだ。

私が声を出せずにコクンと頷くと、公平は短く鼻で笑った。

「やっぱりな。ちょっと付き合えよ。久しぶりに語ろうぜ」

私の返事を待つこともなく、公平は背を向けてクルリと歩き出してしまう。

――あの頃も、そうだった。

私に有無を言わせず、ただ逆らえない笑顔で強引に手を引いていく。
どうすれば私が言葉を詰まらせ、素直についてくるのか、公平はその方法を完璧に知っていたのだ。

大人びた広い背中を追いかけながら、私は急いた足取りで彼の後ろをついて行った。