「全然連絡も来ないし、どうしてんのかなって思ってたんだよ」
レジ越しに投げかけられたその声は、6年前と変わらない柔らかさと懐かしさを帯びていて、私の鼓膜を優しく揺らした。
ど……どうしよう。
頭の中が真っ白になって、喉の奥がくっと縮こまる。
突然の出来事にパニックを起こした心臓が、痛いほどの拍動を全身に送っていた。
何て言えばいい?
どんな顔をすればいい?
何か言葉を返さなきゃいけないのに、唇が震えてうまく動いてくれない。
もっと素直に喜びなよ、と胸の中の私が叫ぶ。
逢いたくて、逢いたくて、この6年間ずっと忘れられずに想い続けてきた人なのに。
今、こうして手を伸ばせば届くほどの距離に彼がいるというのに……。
私はただ動揺に飲み込まれることしかできない。
「どうしてなんの連絡もくれなかったんだよ。俺、何度もラインしただろ? ……ずっと、待ってたんだからな」
すこし拗ねたような、けれど愛おしそうに眉を寄せる公平の表情が視界に飛び込んでくる。
何度もラインをくれたことなんて知っている。
返信できなかったのは、連絡をしてしまえば、あの日に封印したはずの溢れるような恋心がまた痛いほど暴れ出してしまうのが怖かったからだ。
「……あっ、やばい。後ろ、並んでんな」
公平がちらりと後ろの気配を気にし、苦笑いを浮かべた。
「何時まで?」
「――っえ?」
「バイト。今日、何時まで?」
「……5時、まで」
「わかった」
公平はそれだけ短く言うと、ひらひらと片手を小さく上げて、自動ドアをくぐり抜けて行った。
コンビニの静かな店内に、ガラス越しに遠ざかる公平の背中が映る。
取り残された私の胸には、突然の再会に対する戸惑いと、あの日と変わらない彼の無邪気な強引さへの愛おしさが、ぐちゃぐちゃに混ざり合って押し寄せていた。
5時まで、あと少し。
止まっていた6年間の時計が、猛スピードで動き出そうとしていた。


