公平が手首を軽くしならせ、紙飛行機をそっと前へ押し出す。
公平の途方もない想いを乗せた紙飛行機は、一瞬ふわりと浮き上がると、真夏の残響が残る青空の風をいっぱいに受けて飛び立っていった。
ゆらゆらと、ふわふわと、風の波に乗ってどこまでも高く運ばれていく。
――遠く離れたミサキの元へ、彼の切ない恋心を届けるために。
……ああ、どうしよう。
……もう全部、終わったんだ。
遠ざかる紙飛行機の軌跡を見つめながら、私はそっと心の中で息を吐いた。
公平は今、ミサキへの想いを揺るぎないものとして再確認してしまったのだから。
私の中に残っていた、たった1パーセントの儚い可能性。
それが、パチンと音を立てて弾け飛んだ瞬間だった。
「……好きだよ」
フェンスに手をかけたまま、私は消え入りそうな声で呟いた。
私の口からこぼれ落ちた言葉は、どこか遠くから秋の冷たさを運んでくる風にさらわれ、切なく溶けていく。
出会ったあの頃の空気の中に混ざり込むように、遥か彼方へと消えていった。
……けれど。
公平の耳は、風の音に紛れた私の小さな囁きを、確かに拾い上げてしまっていた。
振り返った公平の瞳が、まっすぐに私を射抜く。
その顔には、胸を締め付けられるような、痛々しく苦しげな色が浮かんでいた。
思わせぶりな言葉で散々期待ばかりさせておいて、最後にはいつも、そんな申し訳なさそうな顔をする。
ズルい。
本当に公平は自分勝手だ。
あなたのその優しさが、その苦しそうな表情が、どれだけ私を諦めきれなくさせているのかも知らないで。
茜色に染まりゆく屋上で、私は溢れそうになる涙を必死で堪えながら、ただ公平を見つめ返していた。


