全てがキミだった


「紙飛行機?」

私が差し出した手の中にあるものを見て、公平は小さく首を傾げた。

「そう、紙飛行機。これに想いを乗せて、一番高い場所から飛ばすの。そうしたら……必ず大切な人に、その想いが届くはずだから」

私は手の中の紙飛行機を、そっと公平の手のひらへ手渡した。
小さい頃に作った曖昧な記憶だけをたよりに折った、少し歪で不格好な形の紙飛行機。
公平は、その頼りない紙の翼を潰してしまわないように、壊れものを扱うみたいに両手で丁寧に、優しく包み込んだ。
まるで、生まれたばかりの小さなヒナをそっと抱きしめるように。

公平は何も言葉を発しなかった。
ただ、掌の中にある不格好な紙飛行機をじっと見つめると、静かに、深く目を閉じた。

言葉にならない公平の中の強いミサキへの想いが、一筋の命となって紙飛行機へと流れ込んでいく。

さっきまでしんなりと弱々しかった紙の翼が、彼の溢れるような強い情熱を吸い上げていくみたいに、ぴんと力強く、まっすぐ平行に伸びていくのが見えた。

――準備は、整った。

公平が意を決したように屋上のフェンスから身を乗り出し、夕空へ向けて紙飛行機を高く構える。
私達の頬を優しく撫でる風は、ほんのわずかな微風だったけれど。
想いを乗せて飛び立とうとする紙飛行機にとっては、未来へ繋がる空へ向かうには、十分すぎるほどの追い風だった。