全てがキミだった


だんだん、胸の奥が締め付けられて辛くなってきた。

――『諦め』

たったふたつの文字でできたその言葉が、現実を容赦なく突きつけて、私をどん底の暗闇へと押し落としていく。

プールをあとにした綾が次に向かったのは、校舎の最上階にある屋上だった。

鍵がかかっているかと思いきや、信じられないほどあっさりと扉が開き、あまりにもすんなりと屋上へ出られてしまったので、正直この学校のセキュリティは大丈夫なのだろうか、と少し心配してしまう。

錆びついたフェンスに歩み寄り、そこから広大なグラウンドを見下ろすと、休日にもかかわらず部活に励む生徒たちの賑やかな掛け声や、笛の音が風に乗って心地よく耳に届いた。

ああ……懐かしいなぁ。
……ここから、よく眺めてたなぁ。

高校時代、ここは香織とふたりでサッカー部の練習風景を見下ろしていた思い出の場所だ。

年下のサッカー部キャプテンと付き合っていた香織は、グラウンドで汗を流す彼氏に向かって「おーい!」と遠慮なく大きく手を振っていた。
私に変な気を使うなんてことは、彼女の辞書には一切なかった。

もちろん、下手に気を使われたり遠慮されたりしたら、かえって隣に居づらくなってしまうだけだから。
香織は私のそういうめんどくさい性格を、ちゃんと分かってくれていたのだと思う。

そして――ここは。

眩しかったあの夏、私が公平への長すぎる恋心に、一度目の終わりを告げた悲しい場所でもあった。